menu

2021(令和3) 年度 生存圏科学 ミッション研究 16

更新日: 2021/08/10

研究課題

国内産カラスビシャク系統から調製した生薬半夏と中国産市販半夏中の低分子えぐみ成分の比較解析

研究組織

 代表者 松岡健(九州大学大学院農学研究院)
 共同研究者 矢崎一史(京都大学生存圏研究所)
中西浩平(京都大学生存圏研究所)
江口壽彦(九州大学生物環境利用推進センター)
関連ミッション
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

カラスビシャクはその塊茎(芋)が半夏と呼ばれる生薬(漢方薬原料)として知られ、ムカゴによる栄養繁殖と種子繁殖により増殖する野生植物である。半夏は漢方処方のほぼ1/4に含まれる使用量の多い生薬であるが、100 %中国からの輸入に頼っており、価格上昇が激しいため国内生産が期待されている。そのため、耕作放棄地での栽培系の開発が複数の地方公共団体において近年開始されている。

松岡健: 2021(令和3)年度生存圏ミッション研究 図

九州大学においては学内有志によるプロジェクトとして、国内各所からのカラスビシャクの収集を皮切りに、国内産カラスビシャクの栽培品種化と国内生産系の構築を図る研究を2013年秋から進めている。これまでに、北は北海道帯広市から南は沖縄県与那国島に亘る全国各地から多数の系統を獲得し、それらを維持栽培するとともに(右写真参照)、それらの栽培形質の把握を、定温定湿自然光栽培条件において進めている。またこれらの系統由来の個体から成長の早いものを選抜し、品種登録を進めている。さらに、半夏中の吐気防止能を持つ成分多糖に対するモノクローナル抗体を作成し、収集系統から調製した半夏中のこの多糖成分の含量の定量と、中国産半夏との比較も進めている。

しかし半夏に含まれる低分子のえぐみ成分等の定量系を九州大学の研究グループは持たないため、国内産カラスビシャク由来の半夏が、中国産半夏と同程度にこれらの物質を含有しているか評価を行うことができていない。そこで昨年度までの2年間、薬用植物の低分子有機化合物の成分分析に造詣が深く、低分子物質の定量技術を有する森林圏遺伝子統御分野と共同研究を実施することによりえぐみ成分とされる2種の化合物の存在の検討を進めてきた。その結果、一種の化合物は、検討に用いた市販の半夏1品目と九州大学で栽培中の1系統の塊茎から調製した半夏中に存在が確認されたが、もう一種の化合物の存在は見出せなかった。そこで本年度においては、半夏中にこの化合物が配糖体として存在しているか、および塊茎には存在するが塊茎から半夏への加工の過程で消失するかについて検討を行う。また複数の市販の半夏、および複数の国内産カラスビシャクから調製した半夏を対象に、これら化合物の含有量に関する評価を進める。更に、これら化合物の含量が、同じ条件で栽培した植物由来の異なる半夏(下写真)中においてどの程度のばらつきを持って存在しているかについての解析も進めてゆく。

松岡健: 2021(令和3)年度生存圏ミッション研究 図

ページ先頭へもどる
2021年8月10日作成

一つ前のページへもどる

〒 611-0011 京都府宇治市五ヶ庄
TEL: 0774-38-3346 FAX: 0774-38-3600
E-mail: webmaster@rish.kyoto-u.ac.jp