ご挨拶
更新日: 2024/04/15
生存圏研究所は2004年に発足しました。2024年には創立20周年を迎えます。我々は生存圏科学の確立を目指して研究を進めています。生存圏科学は学際総合科学であって、人間が生きていく上で必須の空間を「生存圏」として捉え、その現状を正確に診断して評価し、生起する様々な問題に対して包括的な視点に立った解決策を提示していきます。持続発展可能な社会の構築に向け、分野横断的な新しい学問 領域の開拓に取り組んでいます。
発足した当時、「生存圏」は目新しい言葉でした。特に英語名称〈Sustainable Humanosphere〉は造語です。環境やエネルギーや資源をひっくるめ、社会全体の持続的な発展が必要であると考え、それを端的に表す名前を生み出しました。国連による「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals; 略称SDGs)」の制定は2015年ですから、我々は、約10年先に同様の目標に向かって走り始めていたことになります。組織が目指す方向を「ミッション」と名付ける方法も、我々はいち早く取り入れてきました。現在、研究所では5つのミッション、1:環境診断・循環機能制御、2:太陽エネルギー変換・高度利用、3:宇宙生存環境、4:循環材料・環境共生システム、5:高品位生存圏を取り組むべき重要課題として掲げています。
当研究所は文部科学省から「生存圏科学の共同利用・共同研究拠点」の認定を受けています。大気レーダー、大型の電波暗室、電波科学の計算機実験装置、木質材料実験棟、植物資源やバイオマス開発用の解析システム、遺伝子組み換え植物に対応した温室、木材腐朽菌や食材性昆虫の研究システムなど、多くの優れた研究設備を有しています。また観測データや貴重な木材標本から構成される生存圏データベースを備えています。これらを全国さらには世界の研究者に対して開放的に運用することで生存圏科学を推進します。組織的には「共同利用・共同研究拠点委員会」が全体を統括し、その下に置かれた複数の専門委員会が個々の活動を進めています。
最近では研究成果が科学研究費の全ての研究分野区分に分布するほど広がってきました。生存圏科学の推進のためには、さらに新しい研究の芽を発見し育てていく活動が欠かせません。そのため2022年に「生存圏未来開拓研究センター」を発足させました。複数の研究ユニットを設けて研究に専念させることで、新興領域・融合領域の研究、学際領域の開拓を目指す組織です。幸いなことに意欲の高い研究者に恵まれて、良いスタートを切っており、引き続き、生存圏科学にふさわしい新分野開拓を進めていきます。 生存圏科学の振興には国際化も重要です。個々の研究者や成果が世界から認められていくことが重要です。一方、当研究所は木質科学や大気科学の分野でアジアに強いつながりを持っています。この特徴を生かしつつ国際化の強化にも取り組みます。
我々は、国内外の関連コミュニティとの連携を図りつつ、生存圏科学の発展に向けて、引き続き積極的に取り組んで参ります。皆様の一層のご支援とご協力をお願いいたします。
第6代所長 山本衛(2024年4月作成)