Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2019(平成31)年度 生存圏科学 ミッション研究 18

研究課題

ダイズのセシウム吸収に関する包括的研究

研究組織

代表者 二瓶直登(東京大学大学院農学生命科学研究科)
共同研究者 杉山暁史(京都大学生存圏研究所)
上田義勝(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御

研究概要

東京電力福島第一原発事故により、福島県を中心に放射性セシウム(RCs)の甚大な被害をもたらした。福島県は農業県であり、安全な農業生産が復興には欠かせない。ダイズは福島県内第2位の生産面積だが、RCs濃度は他作物より高く、その生産には特段の注意を要する。申請者はこれまでに共同研究者(杉山、上田)と共に、子実内のCs分布、時期別のCs吸収から、ダイズ子実のRCs濃度が高い理由を推定した(Nihei et al. 2017, 2018)。

これまで申請者らはカリウムを取り込む輸送体(High affinity K trasporter:HAK5)に着目し、ダイズのGmHAK5ノックダウン系統を用いてセシウム吸収に関する分子メカニズムの一端を示した。しかし、GmHAK5ノックダウン(KD)系統のCs吸収が抑制されるのは生育前半(子実肥大期)までで、生育後半はGmHAK5が抑制されてもCs吸収が起こるため、他遺伝子の関与が指摘された(下図)。本申請では、GmHAK5_KD系統を水耕栽培し、生育時期別にサンプルを採取して、RNA-Seqを実施して生育時期別の遺伝子発現を比較し、特に生育後半のCs吸収に関与する遺伝子制御ネットワークを解明する。

また、除染が進みダイズ生産が再開された地域では、基準値(100 Bq/kg)を超えないまでも数十Bq/kgのダイズを生産する圃場があり、土壌のRCs汚染だけでは説明がつかない事例がある。実際に圃場で生育するダイズのRCs吸収は、微生物も含めた複雑な生態系の中でCs吸収を評価する必要があるが、解析の煩雑さからこれまでに実施された例はほとんどない。そこで、福島県内の圃場においてRCs吸収に関連する土壌成分および微生物の網羅的な抽出を行うことで、ダイズのRCs吸収メカニズムの全容解明を目指す。

ダイズは福島県だけなく、世界的に広く栽培されているため、本申請課題は生存圏全体の問題として世界の食料問題や物質循環へも波及する重要な研究課題の一つである。更に、本申請は東京大学(水耕や現地でのダイズ栽培)、京都大学(遺伝子発現解析、空間線量の測定)それぞれの長所を活かした試験を行うことで、大学間連携による研究の相乗効果を発揮し、福島県の農業復興に寄与することが大いに期待されるものである。

二瓶直登: 2019(令和元)年度生存圏ミッション研究 図

二瓶直登: 2019(令和元)年度生存圏ミッション研究 写真水耕栽培概要

ページ先頭へもどる
2019年7月23日作成

一つ前のページへもどる