Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2019(平成31)年度 生存圏科学 ミッション研究 6

研究課題

表面機械加工による木質材料の接触温冷感の制御技術の開発 —異方性と樹種の影響の検討

研究組織

代表者 小畑良洋(鳥取大学大学院持続性社会創生科学研究科)
共同研究者 金山公三(京都大学生存圏研究所)
梅村研二(京都大学生存圏研究所)
田中聡一(京都大学生存圏研究所)
高橋圭吾(鳥取大学大学院持続性社会創生科学研究科)
関連ミッション
  • ミッション4 循環材料・環境共生システム
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

我々はこれまで,木材の長所として接触温冷感を取り上げ,その定量的評価の物理量として接触面温度を理論的に導出し,支配的な物性値が熱浸透率であることを明らかにしてきた。また,図1の実験概念図の上部に示すような人体を模した加熱装置を作成し,室温下に置かれた木質材料に接触させた時の熱流束(単位時間・単位面積当たりの熱量)を測定することで,接触温冷感との関係性を調べてきた。その熱流束測定の対象として,表面が浮造り加工された複合床材を取り扱った結果,浮造り加工の山の間隔よりも溝が深いほど熱流束が小さいという結果を得た。これは,表面加工の度合いにより熱流束を制御できる可能性を示唆している。しかしながら,浮造り加工は早材部分が削られ溝となり,晩材部分が山として残るもので,間隔や深さを定量的に捉えることは困難である。また,広葉樹の溝を深くできないため,人体側から奪われる熱流束の制御はあまり期待できない。

小畑良洋: 2019(令和元)年度生存圏ミッション研究 図 1図 1 実験概念図

本研究では,積極的に表面を機械加工した木質材料を供試材として熱流束を測定し,熱流束と機械加工度との関係性を明らかにしようとするものである。昨年度,生存圏ミッション研究に採択され,図2に示すように,広葉樹のウリンと針葉樹のベイマツに,フライス加工で溝を作成した。溝幅は2 mm,6 mmとした。山幅はそれぞれ8 mm,4 mmとなる。溝の深さは3,6,9 mmの3通り準備した。表面が機械加工された供試材を,図1に示すように10.0×54.1×0.25 mmの熱流束センサーの長手方向を溝に垂直に貼付し,熱流束を測定した。得られた熱流束最大値と機械加工度の関係を図3に示す。

小畑良洋: 2019(令和元)年度生存圏ミッション研究 図 2図 2 供試材

小畑良洋: 2019(令和元)年度生存圏ミッション研究 図 3図 3 最大熱流束と機械加工度

ウリンとベイマツの比較では,熱浸透率が低いベイマツの方が熱流束最大値は低い。ここで得られた熱流束は,人体から奪われる熱流束に相当するから,温冷感としては奪われる熱量が少ないベイマツの方が温かく感じられることになる。また,山幅が2倍異なるが,接触面積が2倍異なることになるため,溝が3 mmと浅い場合,熱流束の差は2倍である。溝が深くなると熱流束は減少していくが,深さと熱流束の現象の程度は,山幅により異なり,山幅が8 mmの方がより効果的である。

本結果は,溝を深くすることで水平方向の熱流を遮断し,表面側から単位時間内に流入した熱流束で温めるべき容積を減らすことで表面温度がより高くなり,次の時間ステップでは人体側との温度差が小さくなり,その結果人体から奪われる熱流束が減少したと考えられる。このことは,機械加工によって表面の見かけの熱浸透率を下げたことを示唆している。

一方,木材の熱伝導率は異方性を持ち,繊維方向は繊維に垂直な方向の2倍程度の値を持つ。昨年度の結果は,繊維に垂直方向に溝を加工することで,表面の繊維方向への流れを遮断し,見かけの熱浸透率を下げ,全体の熱流束を減少させうる可能性を示している。本年度は,図4 (b),(c) に示すように,溝を繊維に直角方向にも機械加工し,その場合の熱流束の減少の程度を調べるとともに,広葉樹・針葉樹ともに樹種を増やし,機械加工度との関係を明らかにする。

小畑良洋: 2019(令和元)年度生存圏ミッション研究 図 4図 4 木材表面の溝の機械加工のパターン

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2019年7月31日作成

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