Research Institute for Sustainable Humanosphere

第234回定例オープンセミナー
抗卵菌物質サプロルマイシンの生合成に関与する遺伝子の同定

開催日時 2018(平成30)年7月18日(水) 12:30–13:20
開催場所 総合研究実験1号棟5階 HW525
発表者 川﨑崇 (京都大学生存圏研究所・特任講師/ミッション専攻研究員)
関連ミッション ミッション5 高品位生存圏

要旨

放線菌は、抗生物質や抗寄生虫物質、抗癌剤、免疫抑制剤に代表される医薬品・医薬品中間体をはじめ様々な有用物質を生産する菌として知られている。

現在、サケやマスの養殖で大きな被害が報告されている「ミズカビ」(図 1)に対して特異的な生物活性を示す抗ミズカビ剤であるサプロルマイシンEが放線菌から見出されている(図 2)[1]。ミズカビが属する卵菌類の仲間には、陸上植物へ甚大な被害を与える『根腐れ病』や『立枯れ病』の起因菌になるPhytophthoraPythium属なども含まれている。ジャガイモ疫病菌のPhytophthora infestansがその代表例である。また、馬や犬などの動物にも感染することが知られており、その感染が人にも及ぶことがある。人への感染例は、Pythium insidiosumが報告されており、重篤化する場合もある。これは、卵菌類と真菌類では、細胞壁の組成が異なることや分子系統学的に卵菌は、藻類に近縁とであることから既存の抗真菌剤が効果を示さない為と考えられている。したがって、抗卵菌活性などが担保できれば、養殖業に使用する抗ミズカビ剤や農薬として利用でき、養殖業や農業資源を守ることにもつながる。また、将来的に人の役に立つ薬剤の創製にも繋がる可能性がある。そこで、我々は、放線菌が生産する抗卵菌物質の生合成に関わる遺伝子の機能を解析し、その解析結果を活用した精密な代謝デザインを駆使することで、卵菌に対して特異的な作用を示す抗菌物質を創製できればと考えている。

本セミナーでは、特異的な作用を示す抗菌物質の創製を目指す第一歩として、放線菌Streptomyces sp. TK08046が生産するサプロルマイシンの生合成遺伝子群の取得と同定を行った研究成果 [2] について紹介すると共に今後の展望についても紹介する予定である。

S0234_Kawasaki Fig. 2図 1 ミズカビに感染されたマス

S0234_Kawasaki Fig. 1図 2サプロルマイシン Eの構造

引用文献

[1] Nakagawa, K., et al. J. Antibiot. 65, 599–607 (2012).
[2] Kawasaki, T., et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., 80(11) , 2144–2150 (2016).

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2018年7月9日作成

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