概要
本シンポジウムは、生存圏研究所の研究活動の総括として位置づけられている毎年年度末に開催する重要なシンポジウムである。今年度も共同利用・共同研究拠点活動、共同研究等の紹介や成果報告を行い、また、生存圏フォーラムの総会の開催及びポスターセッションも実施した。多くの活動や成果報告を交えて総合的な議論等を行い、生存圏科学の発展や関連コミュニティへの形成に貢献できた。
目的と具体的な内容
生存圏学際萌芽研究センターは、生存圏研究所の 5 つのミッションにかかわる萌芽・学際的な研究を発掘・推進し、中核研究部及び開放型研究推進部と密接に連携して新たな研究領域の開拓をめざしている。その一環として、今年度の生存圏研究所の活動を総括するとともに、今後の活動指針を討議する目的で本シンポジウムを企画・運営した。
具体的には、開放型研究推進部が推進する「共同利用・共同研究拠点活動」、生存圏学際萌芽研究センターが支援する「共同研究(生存圏科学萌芽研究・生存圏ミッション研究)」及び「生存圏フラッグシップ共同研究」、さらに、生存圏アジアリサーチノードの活動・成果報告を行った。一方、今年度の各ミッションの活動紹介やミッション専攻研究員の成果報告等も行った。
なお、本シンポジウムは2日間に分けて行い、特に、昨年度と同様、2日目に生存圏フォーラム総会を開催し、その後、ポスターセッションを実施することで所内教員、ミッション専攻研究員、学内・学外研究者、さらに、生存圏科学を学ぶ学生が直接交流できる場を提供した。
生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献
国立大学の二次試験実施日と重なったが、本年度の生存圏ミッションシンポジウムの参加者は延べ234名であり、昨年度の192名に比べて増加した。本シンポジウムが生存圏研究所の1年間の全活動の総括であるという認識が醸成されてきていると思われる。また、昨年度同様、生存圏フォーラムの総会とその後のポスターセッションは、参加者の増加だけでなく、各研究者の議論の活性化や異分野交流に関して意義があった。全体を通して本シンポジウムは、萌芽・学際的な研究の発掘、将来的な生存圏科学の発展や関連コミュニティへの形成等に大きく貢献できたと考えられる。
プログラム
1日目(2019年2月25日月曜日)
13:00–13:10 | 所長挨拶 渡辺隆司(京都大学生存圏研究所・所長) |
開放型研究推進部 共同利用専門委員会活動報告 | |
13:10–13:25 | MUレーダー(MUR)/赤道大気レーダー(EAR) 委員長:山本衛(京都大学生存圏研究所) 大型大気レーダーネットワークによる成層圏突然昇温国際共同観測(ICSOM) 佐藤薫(東京大学大学院理学系研究科) |
13:25–13:40 | 先端電波科学計算機実験装置(A-KDK) 委員長:海老原祐輔(京都大学生存圏研究所) 弱い固有磁場環境化における火星大気流出機構に関するシミュレーション研究 堺正太朗(東京大学大学院理学系研究科) |
13:40–13:55 | マイクロ波エネルギー伝送実験装置(METLAB) 委員長:篠原真毅(京都大学生存圏研究所) ARAニュートリノ望遠鏡のアンテナの絶対較正 間瀬圭一(千葉大学大学院理学研究院) |
13:55–14:10 | 木質材料実験棟 委員長代理:梅村研二(京都大学生存圏研究所) 顕微鏡観察と画像処理を用いた炭素材料の組織・構造解析 押田京一(長野工業高等専門学校) |
14:10–14:25 | 居住圏劣化生物飼育棟(DOL)/生活・森林圏シミュレーションフィールド(LSF) 委員長:吉村剛(京都大学生存圏研究所) 床下換気扇の野外データの取得 藤村悦生(近畿職業能力開発大学校) |
14:25–14:40 | 持続可能生存圏開拓診断(DASH)/森林バイオマス評価分析システム(FBAS) 委員長:矢崎一史(京都大学生存圏研究所) シロイヌナズナの寿命調節を司る季節同調因子の探索 嘉美千歳(京都大学生態学研究センター) |
14:40–14:55 | 先進素材開発解析システム(ADAM) 委員長:渡辺隆司(京都大学生存圏研究所) マイクロ波照射Michael付加反応の大量合成応用に向けての基礎的データ収集 飯田博一(関東学院大学理工学部理工学科) |
14:55–15:10 | 生存圏データベース 委員長:塩谷雅人(京都大学生存圏研究所) アメリカ国内の美術館に所蔵された東アジア木彫像の樹種調査と展望 田鶴寿弥子(京都大学生存圏研究所) |
15:10–15:20 | 休憩 |
生存圏フラッグシップ共同研究成果報告 | |
15:20–15:30 | 熱帯植物バイオマスの持続的生産利用に関する総合的共同研究 梅澤俊明(京都大学生存圏研究所) |
15:30–15:40 | マイクロ波応用によるエネルギーの輸送・物質変換共同研究 篠原真毅(京都大学生存圏研究所) |
15:40–15:50 | バイオナノマテリアル共同研究 矢野浩之(京都大学生存圏研究所) |
15:50–16:00 | 宇宙生存圏におけるエネルギー輸送過程に関する共同研究 大村善治(京都大学生存圏研究所) |
16:00–16:10 | 赤道ファウンテン 山本衛(京都大学生存圏研究所) |
生存圏学際萌芽研究センター ミッション専攻研究員成果報告 | |
16:10–16:25 | ミッション専攻研究員1 精密代謝デザインによる高度特異的抗卵菌物質の創製 川﨑崇(京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員) |
16:25–16:40 | ミッション専攻研究員2 無衝突磁気リコネクションの運動論的研究 銭谷誠司(京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員) |
16:40–16:55 | ミッション専攻研究員3 Virus-invasive ant interactions: virus diversity, illness-induced behavioral changes and development of biocontrol agent Chun-Yi Lin(京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員) |
16:55–17:10 | ミッション専攻研究員4 マイクロ波精密制御による癌の集学的治療とセラノスティックス 浅野麻実子(京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員) |
2日目(2019年2月26日火曜日)
生存圏研究所 研究ミッション活動紹介 | |
09:30–09:45 | ミッション1 環境診断・循環機能制御 代表:梅澤俊明(京都大学生存圏研究所) |
09:45–10:00 | ミッション2 太陽エネルギー変換・高度利用 代表:三谷友彦(京都大学生存圏研究所) |
10:00–10:15 | ミッション3 宇宙生存環境 代表:大村善治(京都大学生存圏研究所) |
10:15–10:30 | ミッション4 循環材料・環境共生システム 代表:金山公三(京都大学生存圏研究所) |
ミッション5 高品位生存圏 | |
10:30–10:45 | ミッション5-1 人の健康・環境調和 サブミッション代表:高橋けんし(京都大学生存圏研究所)・杉山暁史(京都大学生存圏研究所) |
10:45–10:55 | ミッション5-2 脱化石資源社会の構築 サブミッション代表:飛松裕基(京都大学生存圏研究所) |
10:55–11:05 | ミッション5-3 日常生活における宇宙・大気・地上間の連関性 サブミッション代表:海老原祐輔(京都大学生存圏研究所) |
11:05–11:15 | ミッション5-4 木づかいの科学による社会貢献 サブミッション代表:杉山淳司(京都大学生存圏研究所) |
生存圏アジアリサーチノード成果報告 | |
11:15–11:30 | 生存圏アジアリサーチノード 橋口浩之(京都大学生存圏研究所) |
生存圏フォーラム | |
11:30–12:00 | 総会 |
12:00–13:15 | 休憩 |
ポスター発表 | |
13:15–14:45 |
生存圏学際萌芽研究センターが2018(平成30)年度に公募・採択した「生存圏科学萌芽研究」、「生存圏ミッション研究」とミッション専攻研究員による研究成果(全32件)を発表します。 |
ポスター展示発表 2019年2月26日(火)
数字:ポスター番号
生存圏科学萌芽研究 成果報告
- 「セルロースナノファイバーネットワークをテンプレートとした革新的熱輸送デバイスの創製」
榊原圭太(京都大学化学研究所) - 「鉱物組成が根圏土壌の水・イオン動態に与える影響」
濱本昌一郎(東京大学農学生命科学研究科)
生存圏ミッション研究 成果報告
- 「Survey for viral pathogens in invasive ants in Japan」
Chin-Cheng Yang(京都大学生存圏研究所) - 「International collaborative study on atmospheric turbulence based on simultaneous observations with the MU radar, small unmanned aerial vehicles (UAV), and radiosonde and tethered balloons」
Hubert Luce (MIO, Toulon University) - 「歴史文献中のオーロラ及び黒点記録を用いた過去の太陽活動の研究」
磯部洋明(京都市立芸術大学美術学部) - 「ファインバブルとナノ粒子判別に向けたゼータ電位計測システムの開発と理論的検討 —サブミクロンスケールでの気液界面と固液界面の違い?」
上田義勝(京都大学生存圏研究所) - 「テトラエチルアンモニウムp-トルエンスルホナートを活用した電解反応におけるリグニンの効率的分解反応の開発」
粳間由幸 (国立米子工業高等専門学校) - 「宇宙圏におけるDC電場観測器の高圧集積回路化に関する研究」
尾崎光紀(金沢大学理工研究域) - 「表面機械加工による木質材料の接触温冷感の制御技術の開発」
小畑良洋(鳥取大学持続性社会創生科学研究科) - 「摩擦力を利用したインドネシア産ウリン材の新規接合技術の開発」
梶川翔平(電気通信大学情報理工学研究科) - 「宇宙線防御のための環状電流を用いた磁気シールドの強度制御に関する研究」
梶村好宏(国立明石工業高等専門学校電気情報工学科) - 「イチジク乳液のオミックスと生化学の総合的解析 ~防御機能を担う二次代謝機能を中心に~」
北島佐紀人 (京都工芸繊維大学応用生物学系) - 「大規模木質構造における大型木質面材の吸放湿性能とその構造性能へ及ぼす影響」
北守顕久(京都大学生存圏研究所) - 「インドネシア産ウリン材における未活用材の有効利用技術の開発」
神代圭輔(京都府立大学生命環境科学研究科) - 「揮発性有機化合物の植物生長促進効果に着目した植物油生産への応用と分子メカニズムの解明」
肥塚崇男(山口大学創成科学研究科) - 「Arase衛星波形観測をベースとした地球内部磁気圏プラズマ波動現象に関する研究」
小嶋浩嗣(京都大学生存圏研究所) - 「植林地の効率的な管理を目指したマイクロ波SAR画像解析による林床植生密度の推定」
小林祥子(玉川大学農学部) - 「熱帯産木材の曲げ加工による高意匠化」
杉元宏行(愛媛大学農学研究科) - 「薬用植物の生理活性物質生産に関与する代謝酵素の機能解析」
高梨功次郎(信州大学理学部) - 「伊自良湖集水域における森林土壌に保持されているイオウ化合物の形態」
谷川東子(森林総合研究所) - 「土壌中の植物病原菌密度測定システムの改善と菌密度低減技術の開発」
辻元人(京都府立大学生命環境科学研究科) - 「紫外線計測データに基づく、体内ビタミンD生成量の定量化と最適日光浴時間の提供に関する研究」
中島英彰(国立環境研究所) - 「ダイズGmHAK5ノックダウン系統のセシウム吸収特性の解明」
二瓶直登(東京大学 農学生命科学研究科) - 「パラメトリックスピーカーを用いた低騒音型RASSシステムの開発」
橋口浩之(京都大学生存圏研究所) - 「微小重力下における樹木の形態形成」
馬場啓一(京都大学生存圏研究所) - 「構造均一化リグニンの酸化分解の特性と糖尿病モデル動物を用いた生理活性評価」
三亀啓吾(新潟大学農学部) - 「インドにおける雨滴粒度計の比較による地形性降水過程の国際共同研究」
村田文絵(高知大学教育研究部) - 「持続的な熱帯林業プランテーションにむけた生態系管理」
吉村剛(京都大学生存圏研究所)
生存圏学際萌芽研究センター ミッション専攻研究員 成果報告
- 「精密代謝デザインによる高度特異的抗卵菌物質の創製」
川﨑崇 - 「無衝突磁気リコネクションの運動論的研究」
銭谷誠司 - 「Virus-invasive ant interactions: virus diversity, illness-induced behavioral changes and development of biocontrol agent」
Chun-Yi Lin - 「マイクロ波精密制御による癌の集学的治療とセラノスティックス」
浅野麻実子
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2018年11月13日作成,2019年4月1日更新