Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション5-2 「脱化石資源社会の構築 (植物、バイオマス、エネルギー、材料)」
平成28年度の活動

[バイオマス植物の分子育種と生物生産]

課題1 リグニン代謝工学に基づくイネ科バイオマス植物のテーラーメード育種技術の開発(梅澤俊明、飛松裕基、鈴木史朗)

種々のバイオマス利用目的(エネルギー生産、材料および化成品への変換)に応じたイネ科バイオマス植物のテーラーメード育種技術の基盤構築を目指し、リグニンの量や構造を様々に改変した形質転換イネの作出と特性評価を行う。同時に、有用リグニン形質を持つ大型イネ科植物種の選抜育種も実施する。

最近の活動内容

  • 転写因子を利用したリグニンの増強による高発熱型イネの作出と特性評価
  • リグニンの芳香核組成を様々に制御した形質転換イネの作出と特性評価
  • イネ科バイオマス特有のリグニン部分構造の代謝工学的改変
  • ソルガム、エリアサス、さとうきびのバイオマス特性解析と優良系統選抜

関連の研究成果

  • Koshiba T. et al., MYB-mediated upregulation of lignin biosynthesis in Oryza sativa towards biomass refinery. Plant Biotechnol., in press, DOI: 10.5511/plantbiotechnology.16.1201a.

課題2 光合成微生物を用いた太陽エネルギーによるイソプレン生産技術の開発(矢崎一史、杉山暁史)

イソプレンは合成ゴム等の工業原料として世界中で利用されている。しかし、その供給の全てを化石資源に依存にしており、持続的なイソプレン生産法の開発が求められている。本研究では、ポプラ属樹木のギンドロ(Populus alba)からイソプレン合成酵素遺伝子PaIspSを用いた代謝工学的手法により、光合成微生物であるツノケイソウを用いて効率的にイソプレンを生産させること目指す。

最近の活動内容

  • ギンドロのイソプレン合成酵素遺伝子PaIspSをツノケイソウに発現させた。
  • 形質転換ツノケイソウからイソプレンの生産・放出を確認した。

関連の研究成果

特許出願を行った。

[革新的バイオマス変換技術]

課題3 マイクロ波・生物変換プロセスによるバイオマスの化学資源化(渡辺隆司、西村裕志)

最近の活動内容

  • 木材から高選択的にエポキシ樹脂原料となるリグニンモノマーを生成するソルボリシス反応を産学共同研究で見出し、生成したモノマーから熱力学的性質が異なるエポキシ樹脂を分子設計して、合成することに成功した。また、反応により生成したリグニンオリゴマーの結合様式を詳細に解析し、これらの成果を論文発表した。
  • 機能性ポリマー原料となるリグニンモノマーを通常加熱の2倍以上の収率で生成するマイクロ波反応を見出し、915MHzの連続式マイクロ波反応装置を産学連携研究で開発して、木材の分解実験を実施した。また、反応促進機構を、モデル化合物を用いて解析した。
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図 CREST研究で開発した915MHzの連続式マイクロ波反応装置と木材の分解実験

関連の研究成果

  • A. Kaiho, D. Mazzarella, M. Satake, M. Kogo, M., R. Sakai, Takashi Watanabe, Construction of di(trimethylolpropane) cross linkage and phenylnaphthalene structure coupled with selective β-O-4 bond cleavage for synthesizing lignin-based epoxy resins with controlled glass transition temperature. Green Chem., 18, 6526-6535 (2016).
  • K. Saito, A. Kaiho, R. Sakai, H. Nishimura, H. Okada, Takashi Watanabe, Characterization of the interunit bonds of lignin oligomers released by acid-catalyzed selective solvolysis of Cryptomeria japonica and Eucalyptus globulus woods via thioacidolysis and 2D-NMR, J. Agric. Food Chem., 64, 9152–9160 (2016).

課題4 リグノセルロースの分岐構解析を基盤とした環境調和型バイオマス変換反応の設計(西村裕志、渡辺隆司)

リグノセルロースを有効利用するための成分分離・変換反応を設計する上で、リグニンおよびリグニンと多糖の分岐構造に関する分子情報が重要である。本研究では基盤的な分析技術とそれを使った分子構造解析を行い、酵素反応によるリグノセルロースの環境穏和型変換反応を探求する。

最近の活動内容

  • 二次元NMR法によるリグノセルロースの定量解析法の開発
  • 木質バイオマスからのリグニンー糖結合フラクションの分離
  • リグニンー糖結合フラクションへの酵素反応

関連の研究成果

  • Okamura, H., Nishimura, H., Nagata, T., Kigawa, T., Watanabe, T., Katahira, M., Accurate and molecular-size-tolerant NMR quantitation of diverse components in solution. Sci Rep 6, 21742 (2016).
  • 化学工業日報, 記事報道 (2016).
[バイオマスをベースとした先端機能材料]

課題5 セルロースおよびキチンナノファイバーを用いた成形品の開発(矢野浩之、阿部賢太郎)

持続可能な資源であるセルロースの幅広い利用展開を目指すべく、安全かつ簡便な手法で成型品(フィルム、繊維、フィルター等)を製造する手法を開発する。パルプを機械的解繊することで得られるセルロースナノファイバーを利用することにより溶剤を使用すること無く高い力学特性を示す成型品の開発を目指す。

最近の活動内容

  • 高濃度セルロースナノファイバーの製造
  • セルロースナノファイバーを用いた紡糸繊維の開発

関連の研究成果

  • キチン・キトサンの最新科学技術、日本キチン・キトサン学会編、技術同出版、2016
  • セルロースナノファイバーの実用化技術、S&T出版、2016
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セルロースナノファイバー由来の紡糸繊維

 

 

 

 

 

 

 

 

課題6 バイオマスからのエネルギー貯蔵デバイスの開発(畑 俊充、大西慶和)

電気二重層キャパシタ用電極材料の開発には、高純度で炭素化収率の高い材料を用い、高エネルギー密度化と充放電性能の飛躍的向上が必要である。本研究では、熱硬化性樹脂に木質バイオマスを複合化し炭素材料を調製し、高性能な電極材料を開発する。

最近の活動内容

  • CO2吸着測定による炭化処理温度の異なる試料の空孔径評価
  • セルロースナノファイバーの熱硬化樹脂内での分散状態のSEM観察
  • 複合炭素材料のミクロ孔分布解析
[マイクロ波エネルギー伝送技術の社会実装]

課題7 マイクロ波無線電力伝送に基づくIoT技術の実証研究(篠原真毅、三谷友彦)

脱化石燃料依存社会構築のため、IoT(Internet Of Things)による社会システムの高度化が求められている。本研究では、マイクロ波無線電力伝送を利用したアンコンシャス(無意識)のワイヤレス給電システムや電池レスセンサーの開発を行い、無線により電源と情報の両方を供給する次世代IoTシステムを提案と実証試験を行う。

最近の活動内容

  • 京都大学が受託しているCenter of Innovation (from JST)のプロジェクトの一環として、介護施設の入居者が常に身につける電池レスセンシング装置の開発
  • マルチコプターからワイヤレス給電を行なう火山観測用の電池レスセンサーを開発し、伊豆大島や福島県で実証実験を実施

関連の研究成果

  • ‘15.7.20 (15面) 日経新聞「ドローン 空から給電」
  • ’16.1.22 日本テレビ「0テレNEWS24 “会議のみかた”」
  • ‘16.6.13 日経ビジネス No.1845 「ワイヤレス給電 スマホやEVで実用化迫る」
  • ’17.1 (web) 日本IBM「Mugendai」http://www.mugendai-web.jp/
  • ’17.2.19(予定) BS-Japan「未来EYES」

課題8 マイクロ波電磁環境下における昆虫生態系への影響調査(柳川 綾、三谷友彦)

マイクロ波帯でのワイヤレスネットワーク需要は今後更に増加すると予想される。電磁波の一層の活用のためには、哺乳類以外の生物が被り得る影響についても十分な調査が必要である。そこで、昆虫目をモデルに、電磁波が生態系に与えうる影響について調査する。

最近の活動内容

  • サンプル昆虫のESR測定
  • IoT使用環境を構成する物質サンプの誘電率測定
  • 電磁波照射下におけるシロアリ病原菌感受性試験

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