津田研究室が取り組んでいる研究についてご説明します。
地球大気循環の駆動源として重要だが、観測が不測して研究が遅れていた赤道大気について、とくに対流圏から成層圏・中間圏・超高層大気までの大気波動と上下結合を中心にインドネシアでの現地観測と解析、数値モデルによる研究を行っています。
赤道付近では、太陽放射が大きく積雲対流が盛んで、かつコリオリ力が小さいため大気の運動が制限されにくく、大気波動が盛んに励起され、上方および緯度方向に伝搬し、地球大気全体を動かす駆動源となっています。
当研究室は、CPEAプロジェクト(代表:深尾昌一郎教授、CPEA=赤道大気上下結合)の研究班として赤道大気の観測研究を精力的に進めています。
ラジオゾンデは、温度・湿度などのセンサーを気球に付加して飛ばす直接観測法で、高度30〜35kmまでの温度や風速、対流圏の水蒸気などがわかります。気象台では1日1〜2回の定常観測をしていますが、当研究室では赤道域で1日4〜6回の集中観測をして細かい大気波動を捕らえています。
高度80〜110kmに出来る流星の電離飛跡に電波を照射して散乱波のドップラー周波数偏移を観測し、この高度の風速を測る専用の流星レーダーは、MUレーダーなどにくらべ小型のレーダーです。1978年以来信楽で観測をしていましたが、92年にインドネシアに移設して赤道大気の研究に用いられました。
電離圏D層での屈折率勾配からの分反射を受信する中波帯のMFレーダーは、大きなアンテナ(70〜100m)を3台以上必要としますが、アンテナ間の受信信号の相関処理から高度60〜100kmの水平風速を計測することができます。日本では、NiCTが九州の山川と北海道の稚内で観測をしています。
CPEAプロジェクトでは、津田研はMLT領域を観測する2つのMFレーダーと1つの流星レーダーをインドネシア国内に約1000km離して配置し連続観測を行う計画を実行中です。これらのリージョナルネットワークと経度、緯度方向に連なる国際レーダーネットワークで、地球規模から1000kmスケールさらに小規模な種々の大気波動や構造を研究します。
赤道域では特有の半年周期振動(SAO)、準2年周期振動(QBO)、赤道波(ケルビン波、混合ロスビー波)などが見られるほか、1日周期の大気潮汐や2日周期波も顕著に見られます。単一の測器ではこれらの構造はわからないので、協同観測やキャンペーンが重要となります。
グローバルな大気波動といっても緯度、経度方向に局在したり、非定常で常に遷移したりします。
図は、MFレーダーおよび流星レーダーのネットワークで観測された東西風速のダイナミック周波数スペクトルです。低緯度のハワイ(22N)・クリスマス島(2N)のMFレーダーおよびジャカルタ(7S)の流星レーダーで6〜7日周期の波動の消長を捉えた例となっています。なお、Saskatoonは52N、Adelaideは35Sです。
赤道域の中間圏・下部熱圏(MLT)では東西風速に周期20〜100日の季節内振動(ISO)と呼ばれる変動が顕著です。衛星から見られる長波放射(OLR)は対流の指標となりますが、この20〜100日振動の振幅変動、1日周期波の強度、およびMLTのISOの振幅変動に2年周期の変化とその顕著な相関が見られました。このような上下結合の解析を進めています。
CPEAプロジェクトに沿って種々の研究がインドネシアでの観測データを中心に行われています。
当研究は、以下の研究と関連した内容です。
当研究は、以下の装置を用いておこなわれています。