津田研究室(京都大学生存圏研究所 大気圏精測診断分野)

津田研究室が取り組んでいる研究についてご説明します。

研究内容 / RASS(電波音波併用レーダー)による観測

RASS(Radio Acoustic Sounding System)は、電波と音波を組み合わせ、上空の大気温度を求める観測技術です。津田研究室では、RASSによる観測技術を開発して実際の大気観測レーダーシステムに応用し、さらに、それを用いて気象擾乱の観測を行っています。

RASSの原理

 音波を大気上空に向かって発射すると大気にわずかな疎密ができます。この音波面に向かって電波を発射すると疎密により電波は散乱されます。

 それを受信して、送信した電波との周波数の違い(ドップラーシフト)を求めることにより、音波がどれだけの速さで進んでいるのかがわかります。

 音速は大気温度に依存するので、大気の温度を求めることが出来ます。

MUレーダーのRASS

 MUレーダーは、RASSによる高度10km以上までの観測を実現した初めてのシステムです。

(左) MUレーダーにおけるRASSのスピーカー配置 (右) MUレーダーのRASSスピーカー

上空の大気温度の観測例

 RASSを用いると、非常に高い時間間隔(2〜3分)で気温の鉛直分布を測定できます。なお、気象台で行われている気球(ラジオゾンデ)観測は、12時間毎に行われています。

MUレーダーのRASSで測った大気温度プロファイルを横にずらしながら描いたもの

気象学的応用:寒冷前線の観測例

 RASSによる高い時間分解能の観測は、前線の構造など比較的スケールの小さい現象を調べるのに役立ちます。さらに、同時に水蒸気観測を行うことで気象擾乱をより良く把握できます。

MUレーダーのRASSで測った寒冷前線通過時の気温の偏差(カラー)及び同レーダーで測った水平風速(矢印)

普及型RASSの開発

 当初MUレーダーで実現されたRASSは、より普及型のレーダーにも採用されるようになりました。例えば、当研究所で開発され、気象庁が全国に配備しているウィンドプロファイラー(下部対流圏レーダー)と同型のレーダー用のRASSのシステム開発も行っています。

当研究室でシステム開発を行ったL帯下部対流圏レーダーにおけるRASS(筒状のものがスピーカーである)

現在進行中の研究・開発テーマ

赤道大気レーダーへの応用

当研究所がインドネシアスマトラ島に設置した赤道大気レーダーにRASS機能を付加し、システム開発を行っています。

RASSを援用した水蒸気推定法の開発

RASSによる気温推定と、大気のエコーパワーより水蒸気の鉛直プロファイルを推定する手法を開発しています。

電波・音波・光複合観測

レイリー/ラマンライダーと組み合わせて、大気温度を24時間高精度で観測するための開発を行っています。

より広い高度領域カバーの実現

高度1.5kmより下が測れない大型VHFレーダと、数kmより上が測れないL帯ウィンドプロファイラーのRASSを組み合わせる最適な手法の研究を行っています。

当研究室での関連学位論文

関連する研究

当研究に用いられる装置

 当研究は、以下の装置を用いておこなわれています。

- TSUDA Laboratory - Research Institute for Sustainable Humanosphere [Contact]