津田研究室(京都大学生存圏研究所 大気圏精測診断分野)

津田研究室が取り組んでいる研究についてご説明します。

研究内容 / 中層大気の観測

高度50km以上の中間圏・熱圏とよばれる上層の大気を、さまざまなレーダーや各種の光観測、衛星観測、またそれらを組み合わせて協同観測することで研究しています。そのための観測技術や解析法の開発も、津田研の得意分野です。

中間圏・下部熱圏

 高度50〜90kmの大気を中間圏、さらにその上層を熱圏と言います。

 特に、高度50〜150kmの大気は中間圏・下部熱圏(MLT)といわれ、対流圏の変動や太陽活動の変動の両方で複雑に変化する「地球環境変化」を敏感に反応する領域として、近年重点的に観測研究が進められています。

流星飛跡によるMLT領域のレーダー観測

 流星が大気中で発光するときにできる電離飛跡はレーダー電波を強く反射します。津田研が開発したMUレーダー流星観測では、1日2万個の流星を観測でき、上空80〜100kmの風速や温度に関する情報を世界最高の精密さで観測できます。

↑MUレーダー流星観測で求めた風速の高度分布。30分毎の風速。上空100km付近では100m/sの風が吹くことも珍しくない。

流星の光・電波同時観測

 MUレーダーでは流星の飛跡の他に突入する流星物質周囲のプラズマを測定してその速度や軌道を計測することもできます(光度15等まで)。超高感度のICCDカメラとMUレーダーの同時観測で微小な流星の分布を調べる観測も行っています。

↑(左)MUレーダーで観測された微光流星の軌道、(右)ICCDカメラでとらえた流星とカメラの外観(200mm, F1.8)

MUレーダーによる中間圏観測

 MUレーダーでは中間圏の60〜90km高度からの電波散乱を昼間に受信できます。これは昼間に電離圏D層の電子密度が高いからです。微弱な中間圏エコーを解析して風速を導出する技術の開発や中間圏エコーの特性の研究を行っています。

↑MUレーダーの中間圏電波散乱強度の1日変化(下)と、対応する東西風速のデータ(上)

中間圏風速データの解析

 微弱な中間圏からのエコーは受信信号のスペクトルを詳細に解析することにより観測高度範囲を広げることができます。正確な風速データは衛星観測データの較正にも活かされています。

 MUレーダーで観測された中間圏の風速と、同時に観測された衛星観測とを比較すると、図のようになります。

光・電波による中層大気の共同観測

 高性能なMUレーダーと種々の光観測装置を同時に動かして、中間圏・下部熱圏の大気の現象を研究する共同観測を国内外の研究者を行っています。特に、外国からの研究者が当研究室の学生と共同で研究をする機会も多いのが特徴です。

光・電波による中層大気の共同観測:観測例

↑OH広角イメージャで撮影した大気重力波の砕波(左:東北大撮影)と、同時観測したMUレーダーによる風速の水平分布(右)

 例えば、共同観測から、大気光イメージ中の重力波の砕波の局面で、同領域の水平風速が水平方向に大きく非一様であることを始めて捉えることに成功しました。解明の遅れている大気の波動の砕波や乱流の発生といった微細構造を研究する上で有力な手段です。

現在進行中の研究・開発テーマ

大気光の高度変化・構造の研究
超高層大気のリモートセンシングに使われる大気光の高度や構造の変化を多点イメージャと、レーダー、ライダーなどの観測と協同で解明します。
高性能流星レーダーの開発
MUレーダーで種々の流星観測の実験を重ね、安価で高性能な流星レーダーの開発を目指しています。
ナトリウム温度ライダーとMUレーダーの協同観測
南極昭和基地で活躍した信州大のナトリウムライダーを移設して超高層大気の微細構造を調べます。
MUレーダー中間圏エコーの高度変化の研究
MUレーダー、ライダー、衛星観測などをもちいて中間圏の電波散乱の構造を調べています。

当研究室での関連学位論文

関連する研究

 当研究は、以下の研究と関連した内容です。

当研究に用いられる装置

 当研究は、以下の装置を用いておこなわれています。

- TSUDA Laboratory - Research Institute for Sustainable Humanosphere [Contact]