津田研究室(京都大学生存圏研究所 大気圏精測診断分野)

津田研究室が取り組んでいる研究についてご説明します。

研究内容 / 光を用いた観測

レーザー光を上空に照射して大気を観測するライダー、高感度のCCDで超高層大気の微弱な発光を捕らえて大気の水平構造を調べる大気光イメージャなど、最新の光デバイスを用いた大気の観測研究を行っています。

ライダーの原理

 レーザー光を大気上空に向かって発射すると大気分子や空中に漂うエアロゾル(微粒子)などで散乱され、大型の望遠鏡で受信することができます。受信信号を解析することで、大気の温度、水蒸気量、オゾンなどの大気微量成分、エアロゾルや雲の特性、さらに風速など、種々の大気パラメータの高度分布が計測できます。

 距離(高度)分布が正確にわかるのがライダーの特徴で、レーダーと同様です。

信楽MU観測所 レイリー・ラマンライダー

 信楽MU観測所では、レイリー・ラマンライダーを2000年に開発導入しましたが、さらに回転ラマンライダーへの改良を行い、現在では地上1kmから90kmの大気温度を連続的に観測できるほか、高度10数kmまでの水蒸気を観測できます。

(左)観測風景、(右上)82cmの大型受信望遠鏡 、(右下) 波長532nm・出力30W(600mJ, 50Hz)のYAGレーザー

信楽レイリーラマンライダーでの大気温度観測例

 地表近く(1km)から高度90kmまでの温度を連続計測できるライダーは国内唯一、世界でも数箇所しかありません。

水蒸気の観測例

 ラマン散乱を用いた水蒸気のライダー観測は、天気が晴またはうす曇であるかぎり正確に水蒸気量の高度分布が測定できます。ラジオゾンデによる較正法、広い高度範囲の解析法など、観測も改良が続けられています。

↑(下)信楽レイリーラマンライダーによる水蒸気の観測例、(上)同時刻のMUレーダーのRASSで測った水蒸気推定例。

大気光のイメージ観測:大気光とは

 太陽光により昼間超高層大気に吸収されたエネルギーによって夜間に夜空が微弱に発光します。これを夜間大気光あるいは単に大気光と呼んでいます。

↑種々の大気光の発光高度分布

大気光のイメージ観測

 高感度のカメラで大気光の画像を取得する装置をイメージャと呼んでいます。津田研では、高感度CCDカメラを用いて全天イメージャや広角イメージャを開発し、国内や海外のフィールドに設置して無人観測を行っています。

↑(左)全天多波長イメージャと、(右)全天OHイメージャ

大気光のイメージ観測:観測例

 大気光イメージ中の縞々は、対流圏で発生し、伝搬してくる重力波などの大気波動によるものです。連続的に撮影することで大気波動の水平構造や伝搬を詳細に調べることができ、下層の気象現象を写す鏡となっています。

現在進行中の研究・開発テーマ

信楽レイリー・ラマンライダーの改良
回転ラマンライダーを導入して世界でも最高性能のレイリー・ラマンライダーとなりましたが、さらにチャンネルの増設、観測のルーチン化、自動化などに取り組んでいます。
小型ラマンライダーの開発
境界層内の水蒸気を観測する小型可搬出かつ安価なライダーを開発しています。RASSと組みあわせると威力を発揮します。
2点イメージャ観測による大気光高度変動の観測とデータ解析
30〜100km離れた2地点からの画像データを解析し、大気光の高度構造を解明します。
大気重力波のグローバル観測
日本、インドネシアなど各地で大気光イメージ観測を行い、観測された大気波動をレイトレーシング手法を用いて発生源や伝播過程を調べます。

当研究室での関連学位論文

関連する研究

 当研究は、以下の研究と関連した内容です。

当研究に用いられる装置

 当研究は、以下の装置を用いておこなわれています。

- TSUDA Laboratory - Research Institute for Sustainable Humanosphere [Contact]