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第506回生存圏シンポジウム
太陽地球系物理学分野のデータ解析手法、ツールの理解と応用

更新日: 2023/12/19

開催日時 2023/11/09(木曜日) - 2023/11/10(金曜日)
開催場所 京都大学 (吉田キャンパス)およびオンライン
申請代表者 新堀淳樹(名古屋大学宇宙地球環境研究所)
所内担当者 山本衛、橋口浩之(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション ミッション1 環境診断・循環機能制御
ミッション3 宇宙生存環境
ミッション5 高品位生存圏
関連分野 太陽地球系物理学、超高層大気物理学、データ科学

概要

令和5年11月7日から10日にかけて太陽地球系物理学分野のデータ解析手法とその応用分野と密接な関わりを持つ「STE(太陽地球環境)現象報告会」「宇宙空間からの地球超高層大気観測に関する研究会」「中間圏・熱圏・電離圏(MTI)」との合同で開催した。本研究集会「太陽地球系物理学分野のデータ解析手法、ツールの理解と応用」は,研究発表セッション(口頭+ポスター発表)とデータ解析講習会の2部構成で行った。研究発表セッションの口頭枠は、若手や学生を中心とした招待講演に加えてデータ同化手法やデータベースの横展開に関する招待講演とした。また、データ解析講習会では、Pythonベースのデータ解析ツール(PySPEDAS)の使用法についての講習を実践形式で行い、これから研究を主体的に進めていくであろう学部・大学院生にとって有意義な研究集会となった。

目的と具体的な内容

本研究集会は、「超高層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究(略称:IUGONET)」プロジェクトに深く関わる研究集会である。地球の超高層大気は、太陽系空間からのエネルギー入力(太陽放射や太陽風、磁気圏からの粒子注入等)に加えて、下層大気からの入力(大気重力波等)の影響も受けて変動する。よって、超高層大気で観測される多様な現象を解明するには、全球にわたる3次元結合系を考慮する必要があり、極域から赤道に至る全球的な地上観測や宇宙空間での衛星観測で得られた多様な観測データ、及び、シミュレーションデータを組み合わせた複合解析が欠かせない。このような背景の下、各々のデータに効果的な解析手法(例えば、相関解析、スペクトル解析、データサイエンス手法等)、並びに、複合解析を実施するための様々な解析ツールやデータベース(例えば、データ検索・取得・可視化サービスや統合解析ツール)が開発されてきた。しかしながら、これらの解析手法やツールの情報は、世代を超えた研究者間で必ずしも十分に共有されておらず、学生や若手研究者が自らの研究課題に対しての成果創出には多くの時間と自助努力が必要であった。
 本研究集会では、太陽地球系物理学分野の研究者・学生、データ所有者、データベース・解析ツール開発者が一堂に会し、お互いの知識を共有し、各々の研究者にとって最適な解析方法、研究フローを構築することを目的とする。そこでこれまで本研究集会に参加し、顕著な研究成果を上げてきた若手研究者らによる「招待講演セッション」を設け、次世代の研究を担う学生らに各分野の研究方法を継承させた。また、彼らが主体的にデータ解析手法を学べるように、実際の解析ツールを用いた「データ解析講習セッション」も開催した

生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献

本研究集会は、人類の生存環境である大気圏と宇宙圏との境界領域である超高層大気で起こる様々な長期・短期現象を理解するために、最新のデータ解析手法の共有と多種多様な太陽地球観測データの利用促進を目的としており、生存圏研究所の主要研究ミッション1「環境診断・循環機能制御」、ミッション3「宇宙生存環境」、ミッション5-3「日常生活における宇宙・大気・地上間の連関性」に深く関連する。これまで大学間連携プロジェクト「IUGONET」で開発してきた太陽地球物理学分野のデータベースと異種のデータセットを組み合わせて1元的に解析やデータの可視化を行うデータ解析解析ツールは、これまで長年にわたり生存圏研究所が取得してきた信楽MUレーダーをはじめとする各種の測器で得られた大気圏観測データに応用可能である。さらに将来的には、生存圏研究所が主導している大型研究計画「太陽地球系結合過程の研究基盤形成」や生存圏フラッグシップ共同研究「赤道ファウンテン」の研究成果創出に向けたインフラの整備、研究コミュニティの形成、若手研究者の育成に繋がると考えられる。このような背景の下、例年に引き続き、本年も太陽地球系物理学分野のデータ解析手法とその応用に関連する研究集会と合同開催した。その結果、本研究集会に参加した様々な分野の学部・大学院生が太陽地球系物理学分野の科学成果とそこに至るまでの過程(特に、データ収集、データ解析手法と高度なデータ科学など)を学ぶとともに、大気圏下層から宇宙圏にまたがるデータを取り扱う解析ツールを実際に手を動かして体験するというよい機会になった。また、本研究集会の開催によって若手研究者を奨励し、分野横断的な共同研究の推進につながるような関連コミュニティの形成にも繋がった。

プログラム

2023/11/09 口頭セッション(全て招待講演) 座長:新堀淳樹 (名大ISEE)

10:00-10:30 Fundamental research for the reanalysis data of the space weather based on the global MHD simulation
S. Fujita (DS/ISM), S. Nakano (ISM/DS), A. Kadokura (NIPR), Y. Tanaka(NIPR), R. Kataoka (NIPR), A. Nakamizo (NICT), K. Hosokawa (UEC), and S. Saita (NIT-Kitakyushu)
10:30-11:00 メタデータ変換と機関リポジトリ登録を通じた研究データの発見可能性の向上について:JPCOARへのSPASEメタデータスキーマのマッピングと他機関への展開
大平司(名古屋大学附属図書館), 直江 千寿子(名古屋大学附属図書館)
11:10-11:30 全天イメージャー赤色オーロラ画像からの低エネルギー電子降下フラックスの二次元水平分布の推定
八島 和輝 (京都大学), 田口 聡 (京都大学), 細川 敬祐 (電気通信大学), 小池 春人 (京都大学)
11:30-11:50 XAIによる放射線帯電子変動予測モデルの開発
西宮 祐太 (名大ISEE), 三好 由純 (名大ISEE), 堀 智昭 (名大ISEE), C-W Jun (名大ISEE), 三谷 烈史 (ISAS/JAXA), 篠原 育 (ISAS/JAXA), 高島 健 (ISAS/JAXA), 東尾 奈々 (ISAS/JAXA), 齊藤 慎司 (NICT), 塩田 大幸 (NICT)
11:50-12:10 主成分分析を用いた地上磁場からの半球間沿磁力線電流(IHFACs)成分の抽出
高山 久美 (九州大学), 吉川 顕正 (九州大学), 三好 勉信 (九州大学)

2023/11/10 合同ポスターセッション

P1 トロムソNa共鳴散乱ライダーに適用する時間差マルチビーム手法の構築
雁金 沙弥香 (電気通信大学), 津田 卓雄 (電気通信大学), 青木 猛 (電気通信大学), 渡部 蓮 (電気通信大学), 佐藤 洸太 (電気通信大学), 斎藤 徳人 (理化学研究所), 野澤 悟徳 (名古屋大学), 川端 哲也 (名古屋大学), 川原 琢也 (信州大学)
P2 ナトリウム夜間大気光の分光観測によるD2/D1発光強度比に関する研究
坂元 希優 (電通大), 津田 卓雄 (電通大), 西山 尚典 (極地研), 南條 壮汰 (電通大), 細川 敬祐 (電通大), 野澤 悟徳 (名古屋大), 川端 哲也 (名古屋大), 水野 亮 (名古屋大)
P3 Potassium layer variations observed over Syowa Station (69.0S, 39.6E), Antarctic
Jinyi Hu (UEC), Takuo T. Tsuda (UEC), Mitsumu K. Ejiri (NIPR), Takanori Nishiyama (NIPR), Takuji Nakamura (NIPR), Katsuhiko Tsuno (RIKEN), Makoto Abo (TMU), Takuya D. Kawahara (Shinshu University), Takayo Ogawa (RIKEN), Satoshi Wada (RIKEN)
P4 ひまわり全球リム観測を活用した地球大気の計測手法の開発
津田 卓雄 (電通大)
P5 南極域における夜光雲観測計画
遠藤 哲歩 (明治大)
P6 電離圏ロケット観測に向けた中性大気質量分析器の開発
米田 匡宏 (京大理)
P7 ICON observations of temperature and wind during SSW (2020-2021)
成本 大志 (九大), Liu Huixin (九大)
P8 イオノゾンデ・COSMIC2による日本上空のEs観測とICONによるウインドシアとの比較
寺岡宙惟 (九州大学), Huixin Liu (九州大学), 前田 朋毅 (九州大学)
P9 VIPIRイオノゾンデの高さ校正
西岡 未知, 津川 卓也 (NICT)
P10 Horizontal structures and movements of sporadic E layers observed with ionosonde receiver network
古城 侑季 (京都大学), 齊藤 昭則 (京都大学), 西岡 未知 (NICT), 前野 英生 (NICT), 近藤 巧 (NICT)
P11 前線起源の大気重力波によって励起したMSTIDの研究
木暮 優 (九州大学理学研究院, NASA/GSFC), Min-Yang Chou (NASA/GSFC), Jia Yue (NASA/GSFC), 大塚 雄一 (名大ISEE), Huixin Liu (九州大学理学研究院), Fabrizio Sassi (NASA/GSFC), Sarah McDonald (Naval Research Laboratory), Jennifer Tate (Computational Physics, Inc.), Nicholas Pedatella (NACE/HAO), Cora E. Randall (CUA), V. Lynn Harvey (CUA)
P12 HFドップラー観測を用いた2019年台風Faxai接近に伴う同心円状の電離圏擾乱の解析
榎本 陸登 (千葉大学大学院工学研究院), 中田 裕之 (千葉大学大学院工学研究院), Song Rui (千葉大学大学院理学研究院), 服部 克巳 (千葉大学大学院理学研究院), 細川 敬祐 (電気通信大学大学院情報理工学研究科), 大矢 浩代 (千葉大学大学院工学研究院)
P13 短波ドップラー観測に見られる波状構造の統計解析
細川 敬祐 (電通大)
P14 イオノグラム動画像による重み付き動体検出手法を用いた電離圏エコー抽出
廣重 優 (九工大), 藤本 晶子 (九工大), 阿部 修司 (九大i-SPES), 池田 昭大 (鹿児島高専), 吉川 顕正 (九大i-SPES)
P15 高フレームレートなイオノグラム動画像生成のための電離圏エコー遷移モデル
吉野 郁海 (九工大), 藤本 晶子 (九工大), 廣重 優 (九工大)
P16 P16 地磁気の影響を考慮した短波帯電波伝搬シミュレーションによる伝搬経路変化の解析
阿部 祥大, 中田 裕之, 大矢 浩代 (千葉大学大学院融合理工学府)
P17 中緯度まで到達するプラズマバブルの発達速度
加藤 颯太 (ISEE), 大塚 雄一 (ISEE), 野澤 悟徳 (ISEE), 新堀 淳樹 (ISEE), 惣宇利 卓弥 (ISEE), 西岡 未知 (NICT), Septi Perwitasari (NICT)
P18 低緯度GNSS-TEC平面構造に基づく赤道プラズマバブルの高度分布モデル
牛王 悠輝 (九州工業大学), 藤本 晶子 (九州工業大学), 中村 駿仁 (九州工業大学)
P19 宇宙天気ニュース本文記事検索のための宇宙天気多変量空間モデル
近藤 蒼一郎 (九州工業大学), 藤本 晶子 (九州工業大学), 篠原 学 (鹿児島工業高等専門学校)
P20 深層学習を用いた宇宙天気パラメータに基づく2Dオーロラの生成、古川 瑠晟 (九工大), 藤本 晶子 (九工大)
P21 人工衛星・宇宙デブリの軌道落下量空間予測マップ
福田 創士 (九工大), 藤本 晶子 (九工大), 井上 一成 (九工大)
P22 電離圏現象およびICAOアドバイザリ発生状況の調査
垰 千尋, 津川 卓也, 石井 守 (NICT)
P23 サブストームオンセット直後に見られるオーロラ形態とオンセット位置からの距離依存性に関する研究
松岡 桃伽 (名大), 大山 伸一郎 (名大), 細川 敬祐 (電通大), 三好 由純 (名大), 小川 泰信 (極地研), 栗田 怜 (京大)
P24 複数種イオンと熱的粒子の影響を考慮したプラズマ波動分散関係の数値解析評価
近藤 岳琉 (金沢大学), 八木谷 聡 (金沢大学), 尾崎 光紀 (金沢大学)

2023/11/10 データ解析セッション

13:00-15:00 pySPEDAS基礎講習
今城峻(京大地磁気センター)

 

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2023年4月5日作成/2023年12月4日更新

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