研究課題
Asaia bogorensisのセルロース合成酵素複合体の配列様式解明
研究組織
| 代表者 | 水野 正浩 (信州大学工学部) |
|---|---|
| 共同研究者 | 丹 和磨 (信州大学総合医理工学研究科) 今井 友也 (京都大学生存圏研究所) |
研究概要
セルロースは植物細胞壁の主要成分であり,また一部の微生物によっても合成される最も豊富な天然高分子である。特に微生物由来のセルロースであるバクテリアセルロース(BC)は,高純度・高結晶性・ナノ繊維構造を特徴とし,軽量・高強度・保水性・生体適合性に優れるため,医療材料や音響デバイス,環境分野で注目されている。
これまでのBC研究では,Komagataeibacter属(旧Acetobacter属の一部)が最も汎用的なモデル細菌として用いられてきた。これらの細菌ではセルロース合成酵素複合体(bacterial cellulose synthase complex; Bcs複合体)をコードするbcsオペロンの構成や,膜上におけるterminal complex(TC)の整列様式(図b)について詳細な解析が進められている。一方で,結晶性セルロースを産生する細菌はKomagataeibacter属以外にも存在することが近年明らかとなってきた。その中で特にAsaia bogorensisは,5–20 nmというKomagataeibacter属よりもさらに微細なナノ繊維を産生し(図a),セルロース合成に関わる独自の遺伝子構成をもつ特徴的な細菌である(Kumagai et al. 2011)。しかし,A. bogorensisにおけるセルロース生合成機構,とりわけTCの細胞膜上での配列や集積パターンといった空間的な組織化については,Komagataeibacter属と比べると知見が著しく限られている(図b)。
そこで本研究では,TCの中心的酵素サブユニットであるBcsAを特異的抗体によって標識し,膜断片を対象とするSDS-FRL(SDS–フリーズフラクチャーレプリカラベリング)法及びナノスケールの可視化が可能な超解像顕微鏡(STORM)を適用する(図c)。これにより,A. bogorensisの細胞膜上におけるBcsAの分布様式を高解像度で描出し,その配列規則性の有無を明らかにすることを目指す。得られた結果は,A. bogorensisがなぜ独特な微細セルロース繊維を形成し得るのかという構造形成機構の理解につながり,セルロース合成系の多様性を分子レベルで比較するうえで大きな意義をもつ。
図 (a) A. bogorensisとK. xylinusのセルロース繊維形態 (FE-SEM) (b)細菌セルロース合成酵素複合体配列様式のモデル図,(c) 本研究における実験概要
【参考文献】
Kumagai A, Mizuno M, Kato N, et al (2011) Ultrafine cellulose fibers produced by Asaia bogorensis, an acetic acid bacterium. Biomacromolecules 12:2815–2821
ページ先頭へもどる
2025年8月27日作成


