研究課題
MUレーダー鉛直流データを用いた上部対流圏大気の研究
研究組織
代表者 | 西 憲敬 (福岡大学 理学部) |
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共同研究者 | Hubert Luce (京都大学 生存圏研究所) |
関連ミッション |
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研究概要
MUレーダーの鉛直流データは、長期の蓄積がある。近年、両申請者によって、厳密な品質管理のなされた長期統計研究に適したデータセットが構築されており、それを用いた研究成果も報告されている (Luce, H., Nishi, N., and H. Hashiguchi. 2024, J. Geophys. Res.)。本研究では、このデータを用いて、上部対流圏の大気現象の解明に取り組む。まず、ジェット気流付近で観測される、風速最大高度の上下で鉛直流の向きが反転する現象について、自然現象による部分と、VHFレーダー観測特性による部分を分離して評価する。大気再解析データERA5を用いて自然現象としての鉛直流を評価し、この2つの要因がそれぞれどのような時期にどの程度の影響を与えるかを明らかにすることを目標とする。さらに、上部対流圏に局在する波動である中間規模東進波動に伴う雲変動に与える鉛直流の役割について、MUレーダデータとERA5を組み合わせることによって解明したい。中間規模東進波はSato et al.(1993, J. Meteor. Soc. Jap.)によって発見され、春季の日本付近における巻雲を主体とする上層雲の変動に大きな寄与をもつことが、Kodama et al.(2007, J. Meteor. Soc. Jap.)によって示されている。山田と西 (JPGU 2025発表) は、春季の雲変動についての詳細な解析を行い、この波動による雲は、南風成分が卓越し、上昇流が起きる位相で継続的に発生しており、単なる風による移流によるものではないことを示した。この波動は4月にはMUレーダーの上空を頻繁に通過することを利用し、MUレーダー観測を併用することによって、波動による雲生成の機構について精密な解明を行うことを目指す。
図: 中間規模波動の4月における活動域.上図が鉛直流(Pa/s),下図が上層(300hPa)雲量の0.25-2日周期成分の標準偏差.4月には日本付近で波動が活発である.データはERA5による.
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2025年7月23日作成