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2023(令和5) 年度 生存圏科学 共同研究 0

更新日: 2023/08/22

研究課題

ダイズのセシウム蓄積に関わる候補遺伝子の探索

研究組織

 代表者 二瓶 直登 (福島大学 食農学類)
 共同研究者 杉山 暁史 (京都大学 生存圏研究所)
上田 義勝 (京都大学 生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御

研究概要

放射能汚染による広域での長期的な農耕地の消失は、地球規模での深刻な食料不足とそれに伴う社会・経済の混乱を招く。自然災害や事故に加え、国際紛争やテロリズムによる放射性物質の環境中への放出・拡散リスクによる食糧安全保障に備えるため、作物の放射性元素吸収機構の解明と難吸収性農作物の開発を目指す。
農地に降下した放射性セシウム(RCs)は外部被ばくだけでなく、作物を通じて内部被ばくの恐れがあるため、作物のRCs吸収、特に可食部への蓄積メカニズムは明確にする必要である。申請者はこれまでに、他作物と比較して高い傾向があるダイズのCs吸収メカニズムを明らかにする目的で共同研究者(杉山,上田)と共に、カリウム輸送体の関与を明らかにした。しかし、ダイズではK濃度が高い土壌でもRCsを吸収する場合があり、K輸送体以外の分子メカニズムの関与が想定される。これまで2ケ年、外国および日本で栽培される主要な約320品種・系統を測定し、ダイズ体内のイオン移行や子実のCs蓄積に関わる候補遺伝子を明らかにするため、葉、子実のセシウム(133Cs)濃度の他、葉から子実への転流の指標として測定値の比(実/葉)を算出し、2ケ年分のゲノムワイド関連解析(GWAS)により有用な候補遺伝子の同定を試みてきた。本年度は、(1) 2年間のGWAS解析結果を比較し、両年と高いp値が同位置に現れるQTL領域について、その領域に含まれる遺伝子のストップコドンやフレームシフトなどタンパク質の働きに多大な変化を与えるアミノ酸変異(ナンセンス、フレームシフト変異)をしている遺伝子や、他植物の元素吸収遺伝子に関する既知情報による遺伝子の働きなどからCs輸送に関連ある候補遺伝子を絞りこむ。また、(2)候補遺伝子の特性を明確にするために、(1)で明らかになった候補遺伝子を対象に、その遺伝子変異が入っている品種と入っていない品種を数種ずつポットで栽培し、栽培したダイズのCs濃度を確認する。さらに、候補遺伝子の特性を評価するため、栽培したダイズのCs以外のイオン濃度も測定し、Cs以外のイオン蓄積の影響を明らかにする。
ダイズは近年貴重なタンパク質源としても着目されており、世界的に広く栽培されている。本申請は福島だけの課題ではなく、ダイズを食する生存圏全体の問題として世界の食料問題や物質循環へも波及する。

2023年度共同研究#14 図: 2023(令和5)年度生存圏ミッション研究#14 図

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2023年8月18日作成

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