研究課題
国内稠密GNSS受信機網データを用いた中規模伝搬性電離圏擾乱およびその測位への影響に関する研究
研究組織
代表者 | 大塚 雄一 (名古屋大学 宇宙地球環境研究所) |
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共同研究者 | 横山 竜宏 (京都大学 生存圏研究所) 山本 衛 (京都大学 生存圏研究所) Fu Weizhen (名古屋大学 宇宙地球環境研究所) |
関連ミッション |
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研究概要
GPSをはじめとするGNSS(Global Navigation Satellite System)は、カーナビゲーションや携帯端末などで位置を決定するために用いられ、広く一般に普及している。GNSS衛星から送信された伝搬は電離圏を透過するため、電離圏電子密度の変動は、GNSS測位の精度を劣化させる。このため、電離圏変動の特徴を明らかにし、その発生を予測することが求められている。
中緯度電離圏では、水平波長数百kmの中規模伝搬性電離圏擾乱(Medium-Scale Traveling Ionospheric Disturbance; MSTID)と呼ばれる電子密度の変動が伝搬する現象が発生し、精密測位に対する誤差の原因となっている。図に、GPSによって観測された全電子数変動の例を示す。昼間と夜間において伝搬方向が異なるMSTIDが見られる。
近年の研究では、スポラディックE(Es)層とF領域の間で電磁力学的な不安定が生じ、その不安定が夜間のMSTIDの原因であると考えられるようになってきた。しかし、MSTIDの空間スケールに対応する数百km のEs層の水平構造を直接観測する手段がこれまで無かった。本研究では、国土地理院GEONET(約1,300台の受信機)データに加え、ソフトバンク株式会社が国内に設置している3,300台以上のGNSS受信機で得られたデータも使用し、複数GNSS(GPS, GLONASS, Galileo)データから全電子数を算出する。こような稠密GNSS受信機網データで得られた複数GNSSデータから全電子数データにトモグラフィーの手法を用い、Es層とF領域の電子密度変動を分離することにより、F領域におけるMSTIDの水平構造だけでなく、対応するEs層の水平構造を明らかにし、MSTID生成機構におけるEs層-F領域間結合について考察する。
加えて、MSTIDに伴う電離圏擾乱がGNSS測位に与える影響を調べる。GNSS電波の搬送波位相を使うことにより数cm程度の精度を達成する測位方式である、PPP (Precise Point Positioning; 高精度単独測位)とRTK (Real-Time Kinematic)測位への影響を調べる。
図: 日本上空の全電子数変動。(左)昼間と(右)夜間における中規模伝搬性電離圏擾(MSTID)の例 |
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2023年9月12日作成