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2021(令和3) 年度 生存圏科学 ミッション研究 9

更新日: 2021/08/04

研究課題

スギ林・ヒノキ林の土壌がもつカルシウム貯蔵効率

研究組織

 代表者 谷川東子(名古屋大学大学院生命農学研究科)
 共同研究者 矢崎一史(京都大学生存圏研究所)
杉山暁史(京都大学生存圏研究所)
伊藤嘉昭(㈱リガク)
整(㈱神戸工業試験場)
満(兵庫県立工業技術センタ-)
平野恭弘(名古屋大学大学院環境学研究科)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御

研究概要

日本の森林土壌は1990年代に行われた全国規模の調査により、交換性塩基濃度(土壌肥沃度指標)と交換性アルミニウム濃度(土壌酸性化指標)の2軸により、4種にグループ化されている(図1, Takahashi et al. 2001)。我々はこれまで、4種のうちの3種である「肥沃土壌」・「痩せ土壌」・「肥沃土壌・痩せ土壌などの性格が明瞭ではなかった土壌(性格希薄土壌)」(図1)において、2010年代にもう一度土壌を採取して分析するリサンプリング法により、土壌化学性の遷移を明らかにしてきた。スギは交換性塩基の主成分である交換性カルシウム(Ca)を貯留する能力が高いという樹種特性を持つため、その足元の土壌は一般に、交換性Caが蓄積して土壌酸性度が緩和される。しかし痩せ土壌に成立するスギ林では、土壌に交換性Caを貯留するはずの樹種特性は発揮されず、逆に土壌は痩せて酸性化が進むこと(Tanikawa et al., 2014, 2017)、ヒノキ林は土壌の性質に関わらず、土壌酸性化を進行させる傾向があること(Tanikawa et al., 2014)が示された。痩せ土壌では、全Ca濃度に対する交換性Caの比が肥沃土壌より低く(図3)、「その場にCaがあっても痩せ土壌ではスギは交換性Caを効率的に貯留できない」、すなわち「交換性Ca貯蔵効率が悪い」ことも明らかになった(Tanikawa et al., 2017)。

本研究では、交換性Caを蓄積する能力がスギに劣るヒノキ林の土壌について、交換性Ca貯蔵効率を明らかにする。具体的には、図3と同様の図をヒノキ林でも作成し、肥沃土壌や痩せ土壌における土壌化学性がどのゾーンに当てはまるかを明らかにする。まだスギ林の「性格希薄土壌」についても同様の検討を行う。これにより、樹木が持つ土壌酸性化抑止・促進効果の環境依存性が検証され、その環境依存性を樹種別に評価することが可能になる。

谷川東子: 2021(令和3)年度生存圏ミッション研究 図1, 2

谷川東子: 2021(令和3)年度生存圏ミッション研究 図3

引用文献)
Tanikawa, T., Sobue, A., & Hirano, Y. (2014) Forest Ecology and Management 334, 284–292.
Tanikawa, T., Ito, Y., Fukushima, S., Yamashita, M., Sugiyama, A., Mizoguchi, T., Okamoto, T., Hirano, Y. (2017) Forest Ecology and Management 399, 64–73.
Takahashi, M., Sakata, T., & Ishizuka, K. (2001) Water, Air, and Soil Pollution 130(1-4), 727–732.

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2021年8月4日作成

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