研究課題
ウキクサ細胞壁多糖を利用したホウ素排水処理技術の開発
研究組織
代表者 | 小林優(京都大学大学院農学研究科) |
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共同研究者 | 梅澤俊明(京都大学生存圏研究所) 飛松裕基(京都大学生存圏研究所) |
関連ミッション |
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研究概要
ホウ素は排水中の濃度規制対象物質であるが効率的な除去手段が確立されていない。本研究では、ウキクサ属植物が有する細胞壁多糖がホウ素を多量に結合することに着目し、コウキクサ植物体から調製される吸着材を用いて排水からホウ素を除去する技術を開発することを目指す。
ホウ素は水質汚濁防止法で指定された有害物質のひとつであり、陸域における排水中のホウ素濃度は10 mg L−1 以下とすることが定められている。ホウ素化合物はガラス原料や釉薬、めっき溶剤などに使用されるため、窯業やめっき業など一部産業からの排水は前記基準値を超過するケースがある。ホウ素は不溶化しにくい元素であり凝集沈殿法による除去が難しい。このため現在はホウ素吸着樹脂を用いるホウ素除去処理が一般的であるが、より低コスト・低環境負荷の処理技術開発が求められている。
水生植物であるウキクサ属の細胞壁にはホウ素を多量に結合する多糖が存在する。我々はこの多糖を排水からのホウ素除去に利用することを検討してきた。これまでに、ウキクサの一種コウキクサ植物体を酸処理するのみの簡便な操作で得られる残渣が、水溶液からのホウ素吸着材として利用できる可能性を見出した。この素材のホウ素吸着性能は現時点では市販ホウ素吸着樹脂の1/10程度であるが、調製の容易さ、低コスト性や環境親和性を考慮すれば、その利用可能性を検討する価値はあると考える。そこで本年度の研究では、昨年度までに得た知見に基づき、コウキクサ植物体からの吸着材調製法の更なる効率化を検討するとともに、得られる吸着材の性能を定量的に評価し、植物素材を用いた排水からのホウ素除去の技術基盤を確立することを目指す。
水田におけるウキクサ属植物の様子
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2021年8月4日作成