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2021(令和3) 年度 生存圏科学 ミッション研究 5

更新日: 2021/08/04

研究課題

合理的代謝フロースイッチングによる芳香族生理活性物質の生産

研究組織

 代表者 肥塚崇男(山口大学大学院創成科学研究科)
 共同研究者 矢崎一史(京都大学生存圏研究所)
市野琢爾(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

稀少植物を含めた天然資源に由来する生理活性物質、特に揮発性の芳香族香気物質は、長引くコロナ禍での生活習慣病予防など人の健康維持に欠かせない機能性成分として重要視されている。そのような中、海外では、稀少植物に由来する天然香料の代替品として、バイオテクノロジー技術によって生産されるバイオ香料が注目を集めている。一方で、その生産性は外部からの多量の炭素源供給に依存しており、エネルギー源投資の過多が問題となっている。そのため、この問題に対して、植物細胞内の代謝フラックスを合理的に改変できれば、植物バイオマスに由来する効率的な生産システムの構築が可能となる。

そこで、申請者らは世界に先駆けて発見したフェニルプロパノイド生合成遺伝子の活用を特色として、代謝経路の分岐点に着目した合理的代謝工学により、植物バイオマスとして豊富に存在する色素成分や木質成分(リグニン)を生理活性香気物質の生成へと利活用することを本研究の目的とした。具体的には、下記の2点について研究を進める。

①色素成分から生理活性香気物質への代謝フロースイッチング —異なる発現ホストによる生成量の比較—

色素成分であるシコニンを多量に生成するムラサキにおいて、その内在性基質が豊富に存在することが予想されることから、芳香族香気物質であるラズベリーケトンの生合成遺伝子(BAS, RZS)を35Sプロモーター下で過剰発現させた形質転換ムラサキを作出し、色素成分から香気物質への代謝フローをスイッチングする。申請者らは現在までに、同様の代謝工学デザインをナス科のモデル植物であるタバコにおいても進めており、異なる発現ホストの違いが香気成分生成量にどう影響するのかを合わせて比較、解析する。

②木質成分から生理活性香気物質への代謝フロースイッチング —異なる分岐点による生成量の比較—

木質成分であるリグニンは生合成中間体であるp-クマロイルCoAがさらに代謝されたモノリグノールの重合反応により生合成される。申請者らはモノリグノールから多彩な生理活性を示す芳香族香気物質オイゲノールを作り出す鍵酵素(CFAT, EGS)を単離することに成功している。これらオイゲノール生合成遺伝子をタバコで過剰発現させ、木質成分から香気物質への代謝フローリダイレクトを行い、上述項目①の形質転換タバコと比較し、同じ生合成経路上 の異なる分岐点での代謝フロースイッチングが香気物質生成量に与える影響を比較する。また、本研究で得られた形質転換体に植物ホルモン処理や光ストレス処理を行い、細胞内基質濃度が誘導的に高まる条件を確立する。以上の代謝工学アプローチの結果を統合し、内在性基質を利用した代謝工学デザインの最適化を行うことで、同生合成経路を利用した他の芳香族生理活性物質の生産への応用も目指す。

肥塚崇男: 2021(令和3)年度生存圏ミッション研究 図

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2021年8月4日作成

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