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2021(令和3) 年度 生存圏科学 ミッション研究 4

更新日: 2021/08/05

研究課題

GNSS全電子数絶対値の高精度推定

研究組織

 代表者 大塚雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)
 共同研究者 Chen Zhiyu(名古屋大学宇宙地球環境研究所)
衛(京都大学生存圏研究所)
享(国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所電子航法研究所)
Prayitno Abadi(インドネシア航空宇宙庁)
Punyawi Jamjareegulgarn(KMITL, タイ)
関連ミッション
  • ミッション3 宇宙生存環境

研究概要

近年、GPSをはじめとするGNSSは、正確な位置や時刻を常時供給するシステムとして広く使われ、社会インフラとして必要不可欠なものになってきた。電離圏研究においても、GNSSデータを利用することにより全電子数を高時間・高空間分解能で連続して得られることから、広く使われるようになってきた。しかし、GNSSデータから導出される全電子数には、各GNSS衛星と受信機に固有のバイアスが含まれており、全電子数の絶対量を求めるには、このバイアスを推定し、取り除く必要がある。本研究代表者らは、それらのバイアスを推定し、全電子数の絶対値を導出する方法を開発した。この方法は、国内外の9,000点を超える受信機データに適用され、全電子数のデータベースが構築され、webページで公開されている(図1)。

大塚雄一: 2021(令和3)年度生存圏ミッション研究 図1図1:名古屋大学宇宙地球環境研究所が整備しているGNSS全電子数データのwebページ

また、これまでに、磁気嵐に対する電離圏変動などの研究に用いられてきたが、近年、赤道域において、本来はあり得ない負の値が全電子数として推定されることが指摘されるようになった(図2)。本研究課題では、ソフトウェア的・ハードウェア的にバイアスを高精度に推定し、全電子数の高精度な測定を行う方法を確立することを目的とする。

大塚雄一: 2021(令和3)年度生存圏ミッション研究 図2図2: 赤道域付近に位置するGNSS受信機で得られたデータから推定した全電子数の日変化の例。全電子数の値が負になっている時間(02-11 UT)が見られる。

本研究では、GNSS観測から、高精度に全電子数絶対値を求めるため、以下の研究項目を実施する。
(1)GNSSシミュレーターで発生させたGNSS信号をSeptentrio社のPolaRxS受信機に入力してデータ取得する。本データは、全電子数を含まないため、直接、受信機バイアスを測定することができる。さらに、受信機の周囲の温度を変化させ、バイアスの温度変化を調べる。
(2)国内において、GNSS観測を実施し、全電子数データを取得する。中緯度は、全電子数の変動が比較的小さく、プラズマ圏電子密度が小さいため、全電子数絶対値推定精度も高い。
(3)ほぼ同一経度で、磁気赤道及びその南北約10度に位置するインドネシア・コトタバン、タイ・チュンポン及びチェンマイの3ヶ所にそれぞれGNSS受信機を設置し、全電子数データを取得する。
(4)従来の全電子数絶対値推定方法(Otsuka et al., EPS, 2002)に以下の改良を加える。
– GPSに加え、他の衛星システム(GLONASS, Galileo, Beidouなど)データから得られる全電子数データを用いて、全電子数絶対値を推定する。
– 従来は、全電子数は電離圏からの寄与のみを考えていたが、10 %以上もプラズマ圏からの寄与があることから、電離圏にプラズマ圏を加えた二層モデルによる 推定方法を確立する。
(5)上記の(2)、(3)で得られた全電子数に、(4)で開発した絶対値推定方法を適用し、推定されたバイアスと、(1)で直接ハードウェア的に測定されたバイアスを比較し、全電子数推定方法の精度を検証する。また、インドネシア、タイには、低軌道衛星から送信されるビーコン電波を受信する装置が設置されており、プラズマ圏の影響を受けない全電子数を測定することができる。これらのデータとの比較を行い、全電子数推定方法の検証を行うとともに、プラズマ圏電子密度の大きさを推定する。この結果、磁気嵐時におけるプラズマ圏電子密度変動を捉えられると期待される。

参考文献
Otsuka, Y., T. Ogawa, A. Saito, T. Tsugawa, S. Fukao, and S. Miyazaki, A new technique for mapping of total electron content using GPS network in Japan, Earth, Planets, and Space, 54, 63–70, 2002.

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2021年8月5日作成

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