Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2020(令和2) 年度 生存圏科学 ミッション研究 17

研究課題

宇宙地球結合系における宇宙空間・地球超高層大気プラズマ粒子の革新的計測技術の基盤開拓

研究組織

 代表者 平原聖文(名古屋大学宇宙地球環境研究所)
 共同研究者 小嶋浩嗣(京都大学生存圏研究所)
横田勝一郎(大阪大学大学院理学系研究科)
関連ミッション
  • ミッション3 宇宙生存環境
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

生存圏における普遍的な研究課題の1つは、太陽系における人類活動の始点・拠点としての地球環境と、地球環境を包含する地球近傍宇宙空間との間で生起する領域間結合過程を支配する根本的な物理原理に関する総合的な探求と解明である。地球大気圏・生存圏からそれらの領域までの宇宙空間は、希薄ではあるが数百万度以上にも及ぶ高温宇宙プラズマが支配する宇宙普遍的な磁化プラズマダイナミクスの世界であり、地球生命圏における中性大気環境では発現し得ない極限状態の物理機構が生起する。この「宇宙生存圏」における科学的・社会的人類活動の基盤・発展を学術的に支えるためには、地球大気圏での定常的な気象観測に相当する宇宙プラズマダイナミクスの直接観測が必須である。そのためには、独創的・機動的な探査衛星計画を主体的・継続的に推進しつつ、並行して革新的な計測技術の基盤開拓を遂行することが求められる。その中でも特に、人類の宇宙進出・恒常的活動の最前線である地球超高層・周辺宇宙空間ダイナミクスを支配する磁化プラズマ粒子は最重要計測対象として考えられており、これらを対象として基盤的計測技術の獲得と計測機器開発環境の構築が実証的探査においては本質的であり、国内外でも希有な粒子計測技術を獲得・活用するための基盤開拓的研究開発活動を展開する必要がある。加えて、次世代探査衛星計画を策定・提案するためにも、あるいは他のロケット実験・超小型衛星計画も実現・検討途上にあることにも鑑み、国内外でも希有な機器較正実験設備を有する我々の開発環境を活用しつつ、先端的発想による新機軸の宇宙プラズマ粒子分析器の設計・開発を進めることが求められる。

そのため本研究では、計測技術上の具体的な開発課題(広い視野全域にわたり均等な計測特性を有し、電子・イオンに対する完全同時計測を世界で初めて1台のセンサーヘッドで実現する小型・軽量・省電力の静電型荷電粒子エネルギー分析器の開発)を計画しており、並行して、その開発研究上で求められる粒子ビームライン較正実験設備の改良・効率化と安定運用を提案する。ここで我々が開発対象としている新機軸の宇宙プラズマ粒子分析器においては、力学的・機械的な原理・手法ではなく電磁気的な技法を採用する。
特殊な形状の電極に数V~数kVの電位を印加することで荷電粒子のエネルギーを分析し、高温プラズマが飛び交う宇宙空間において広い視野範囲を網羅しつつ、宇宙プラズマを構成する電子とイオンを同時に計測することを可能とするため、独創的発想・独自設計により軸対称二重殻電極構造を有する「二重殻式静電型荷電粒子分析器」を開発する。図1・2に現在設計中の2種類の分析器の構造概念図を示す。殻状電極の中殻部とコリメータ内部の円環電極に同符号の高電圧を印加すれば、その4倍程度のエネルギー帯域の電子・イオンに対して完全同時計測が可能となる。この分析器の卓越した特徴としては、電子・イオン分析部を1つのセンサー内に階層的に内包し、平面内にある視野毎の分析収差を解消する、ということが挙げられ、現時点では世界的に類を見ない設計思想・機器構造である。これまでは電子・イオン用に計2台の分析器が必要であったが、本研究では単一分析器により完全同時計測の実現を行う計画である。

宇宙生存圏での環境計測における新しい潮流となり得るこの次世代分析器の基盤技術開拓においては、まずは計算機による荷電粒子軌道の数値計算を基に、分析器内の電極構造の最適化を図る。様々な将来探査計画への適用を見据え、できる限り小型・軽量化を目指した詳細設計に基づく試作品の製作・組立を実施し性能評価・特性取得を行う。また、宇宙空間を飛翔する探査衛星にとって避けがたいのが太陽光・ジオコロナからの光学的な影響であり、これらによる光雑音に対する対策を講ずるため分析器の電極構造を改良する。具体的には電位分布を極力維持しつつ、分析器電極間での光反射を劇的に低減するセレーション(鋸歯状)電極構造を高精度の金属加工にて実現する。この試作器電極改修を施した後、雑音低減効果を実験的に確認・評価する。以上の一連の実証的分析器開発では、我々が日本で唯一の較正実験装置として有している荷電粒子ビームライン設備(写真)を活用し、宇宙プラズマ粒子の観測状態を模擬することで詳細な較正実験を行う。なお、粒子ビームライン較正実験装置の特性向上のための改良も併せて実施する必要があり、微妙な電圧調整を実現するため、高精度電圧制御・監視ユニットの改修を行い、複数機器間のインターフェース用通信に関するプログラミング開発を行う計画である。光雑音の評価のためには、現有の重水素ランプも併用する予定である。

平原聖文: 2020(令和2)年度生存圏ミッション研究 図 1図1: スピン姿勢制御式超小型衛星搭載用全平面視野式二重殻型エネルギー分析器

平原聖文: 2020(令和2)年度生存圏ミッション研究 図 2図2: 3軸姿勢安定式超小型衛星搭載用半球視野掃引式二重殻型エネルギー・質量分析器

平原聖文: 2020(令和2)年度生存圏ミッション研究 写真写真: イオン・電子を照射するビームラインと真空槽・地球磁場低減用ヘルムホルツコイルでからなる荷電粒子分析器の較正実験装置

ページ先頭へもどる
2020年8月3日作成

一つ前のページへもどる