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2020(令和2) 年度 生存圏科学 ミッション研究 15

更新日: 2020/08/03

研究課題

ソフトウェア無線多チャンネル受信システムを用いた赤道大気レーダーアダプティブクラッター抑圧技術の開発

研究組織

 代表者 橋口浩之(京都大学生存圏研究所)
 共同研究者 寺田一生(京都大学生存圏研究所)
Syafrijon (LAPAN, Indonesia)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

赤道域は地表へ入射する太陽放射エネルギーを最も強く受ける領域で、特にインドネシア海洋大陸域では、太陽光による島嶼(とうしょ)の加熱と周辺の海洋からの水蒸気供給によって、地球上で最も対流活動が活発で、地球大気の各種現象の駆動源になっている。我々は2001年に大型大気レーダーである赤道大気レーダー(Equatorial Atmosphere Radar: EAR)をインドネシア西スマトラの赤道直下に完成させ、赤道大気の観測研究を推進している。

大気レーダー観測において、しばしば山や建物など固定クラッターからのサイドローブエコーが観測の障害になることがある。我々は国内のMUレーダーの多チャンネル受信機能を活かして、NC-DCMP(ノルム・方向拘束付き電力最小化)法を用いた実時間クラッター抑圧システムの開発に成功した。一方、EARはMUレーダーと同じアクティブ・フェーズド・アレーシステムを採用しているものの、受信機は1チャンネルのみで各アンテナからの信号は単純にアナログ合成されている。そこで、我々は、汎用のソフトウェア無線機USRP X300 2台を使用して、最大4チャンネルからの同時受信が可能なシステムを開発している。EAR本体の10 MHz基準信号と1 PPS信号を分配し、すべてのソフトウェア無線機に供給することで、EARシステムと多チャンネル受信システムの同期を実現した。レンジング・パルス圧縮復号・コヒーレント積分などの信号処理をリアルタイムに実行しての連続観測が可能である。

EARの周辺には3000 m級の山が存在し、クラッター環境はMUレーダーよりも良くない。本研究では、EARでNC-DCMPクラッター抑圧を可能とするため、EARのアンテナアレイの周辺に固定クラッター受信専用のアンテナを数本設置し、それらから得られる信号を汎用のソフトウェア無線機を用いて多チャンネル受信するシステムを開発する。クラッターをより良く抑圧するためには、メインアンテナのメインローブ方向(EARの場合、天頂角30度以内)に感度を持たず、クラッター方向(ほぼ水平方向)に指向性を持つようなアンテナを利用するのが良いことが知られている。そこで、EARアンテナの周辺に天頂方向に感度がなく水平方向に全方位に指向性を有するターンスタイルアンテナを導入し、そのアンテナで積極的にクラッターエコーを受信する。アンテナ直下に帯域通過フィルターとLNA(低雑音アンプ)を設置し、EARの中心周波数(47 MHz)周辺の信号のみを増幅した後に同軸ケーブルにより観測棟内に設置されるX300受信機に入力する。メインアンテナを加えた4チャンネルでの同時受信を行い、最初は複素時系列データをすべてハードディスクに保存し、オフライン処理でNC-DCMP法によるクラッター抑圧を試みる。その際、メインアンテナとターンスタイルアンテナでゲインが異なるので、ゲイン比を考慮した方向拘束ベクトルを用いて、NC-DCMP処理を実施する。効果が確認できれば、本手法を実時間処理システムとして実装する。

橋口浩之: 2020(令和2)年度生存圏ミッション研究 図EARアダプティブクラッター抑圧

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2020年8月3日作成

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