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2020(令和2) 年度 生存圏科学 ミッション研究 13

更新日: 2020/08/03

研究課題

ダイズのセシウム吸収に関するカリウム以外の影響検討

研究組織

 代表者 二瓶直登(福島大学食農学類)
 共同研究者 杉山暁史(京都大学生存圏研究所)
上田義勝(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御

研究概要

東京電力福島第一原発事故により福島県を中心に放射性セシウム(RCs)が沈着し、甚大な被害をもたらした。福島県で栽培される作物のうち、特にダイズは他作物よりRCs濃度が高く、その生産には特段の注意を要する。申請者はこれまでに共同研究者(杉山、上田)とカリウム輸送体(High affinity K trasporter HAK)のノックダウン系統(KD)を用いてCs吸収に関する分子メカニズムの一端を世界で初めて示した。しかし、HAKがCs吸収に関与するのは生育前半の栽培時K環境が低い条件で、高いK環境や生育後半ではHAKの発現が抑制されているにも関わらずCs吸収が起こるため、他遺伝子の関与が示唆される。シロイヌナズナを用いた報告では、カルシウム(Ca)など陽イオンの輸送体であるCyclic nucleotide-gated channels(CNGCs)がCs吸収に関与し(Hampton et al., 2005)、高Ca環境でCs吸収の抑制を指摘している。我々もダイズ幼植物を用いた試験で、生育時のCa濃度の上昇がCs吸収を抑制することを確認している。しかし、生育時のCa環境がダイズ子実に及ぼす評価や、生育期間中の遺伝子変化については未解明である。

本申請では、①生育時のカルシウム、カリウム濃度を変えて栽培し、RCsの吸収と生育時期別の遺伝子発現を確認する。溶液中のカルシウム濃度2段階(0.2 mM, 2 mM)、カリウム濃度(0.3 mM, 3 mM)で水耕栽培(133Cs 0.1 ppm含む)し、生育時期別にCs吸収パターンとダイズ根の遺伝子発現のパターンを比較して、時期別のCs吸収関連遺伝子の探索を行う。遺伝子発現解析はゲノム上の全遺伝子発現を対象としたRNA-seq解析法を使う。②また、カルシウム、カリウムの効果は、例え水耕栽培で効果が認められたとしても土壌型等によって異なることが予想される。実際のダイズ栽培の再開に備え、特定復興再生拠点(飯舘村、双葉町、大熊町を予定)を含めた福島県内数カ所の土壌を用いてポットでダイズを栽培し、カルシウム、カリウムの添加効果を検討する。③そして、農地に降下したRCsの除染は重機による表土剥ぎ取りが実施されている。圃場表面が均一でなく、圃場内にRCsが不均一に残存していることが予測される。除染圃場内のRCs残渣の分布をマップ化するためGPS連動型放射線自動計測システム(KURAMA; Kyoto University Radiation MAping system)で測定する。

ダイズの生産現場ではK施肥の効果が低い圃場があり、K施肥以外の抑制対策が期待されている。ダイズは世界的に広く栽培されているため、本申請は生存圏全体の問題として世界の食料問題や物質循環へも波及する重要な課題の一つである。更に、本申請は福島大学(水耕や土耕での栽培)、京都大学(遺伝子発現解析、空間線量測定)各々の長所を活かした試験を行うことで大学間連携による研究の相乗効果を発揮し、福島県の農業復興に寄与することが大いに期待されるものである。

二瓶直登: 2020(令和2)年度生存圏ミッション研究 図

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2020年8月3日作成

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