Research Institute for Sustainable Humanosphere

共同研究

2020(令和2) 年度 生存圏科学 ミッション研究 11

研究課題

肥沃でもなく酸性化も進んでいない土壌の20年後の姿

研究組織

 代表者 谷川東子(名古屋大学大学院生命農学研究科)
 共同研究者 伊藤嘉昭((株)リガク)
整((株)神戸工業試験場)
満(兵庫県立工業技術センタ-)
矢崎一史(京都大学生存圏研究所)
杉山暁史(京都大学生存圏研究所)
平野恭弘(名古屋大学大学院環境学研究科)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御

研究概要

スギ・ヒノキは我が国の人工林の7割を占める主要な造林樹種である。このスギ・ヒノキ林は、植林時の経済的な事情により、それぞれの生育に適さない場所にも成立している。我々はそのような場所で土壌を調査し、20年前と資料と現代の分析値とを照合して次の内容を明らかにしてきた:

  1. スギを痩せた土壌で生育すると、本来、土壌を肥沃にするはずのスギの能力は発揮されず、逆に土壌は痩せて酸性化が進む(Tanikawa et al., 2014, 2017)。
  2. ヒノキ林は土壌の性質に関わらず、土壌酸性化を進行させる傾向がある(Tanikawa et al., 2014)。

土壌の酸緩衝能は、「酸性度を抑制する交換性塩基の濃度」と「酸性度を高める交換性アルミニウムの濃度」の2つの指標に左右される。交換性塩基は植物が土壌を肥沃にするために表層にため込む物質であり、交換性アルミニウムは土壌が酸性化すると土壌中に出現する物質である。このため一般に、交換性塩基が多い土壌は交換性アルミニウムが少なく、交換性アルミニウムが多い土壌は交換性塩基が少ないという関係がある。前者は肥沃な土壌、後者は痩せて酸性化している土壌と定義できる。基準値は土壌の交換性塩基濃度5 cmol(+) kg−1、交換性アルミニウム濃度5.4 cmol(+) kg−1である(Takahashi et al., 2001)。

しかし、1990年代において20 km × 20 kmに1箇所の森林で実施された全国規模の土壌調査の報告(Takahashi et al., 2001)には、「交換性塩基も交換性アルミニウムも少ない土壌」、つまり「肥沃でもなく酸性化も進んでいない土壌」が、少なからず存在することが示されている。それらは20年前当時にまだ若く、物質を貯留する機能が十分育っていなかったものの、現在は交換性塩基か交換性アルミニウムのどちらかを優先的に保持していると予想される。そこで土壌の再調査を行い、スギ・ヒノキがもたらす方向性(土壌の肥沃化/酸性化の方向性)を明らかにすることを、本研究の目的とする。具体的には、スギ林とヒノキ林を合わせ8林分(4土壌断面/林分、3深度/土壌断面)の「肥沃でもなく酸性化も進んでいなかった土壌」を対象に、交換性塩基濃度や交換性アルミニウム濃度、附随して土壌pH、炭素含量、窒素含量を計測し、肥沃化あるいは酸性化の方向性を探る。

谷川東子: 2020(令和2)年度生存圏ミッション研究 図「肥沃でもなく酸性化も進んでいなかった土壌」の断面写真(兵庫県スギ林の例)

引用文献

Tanikawa, T., Sobue, A., & Hirano, Y. (2014) Forest Ecology and Management 334, 284–292.
Tanikawa, T., Ito, Y., Fukushima, S., Yamashita, M., Sugiyama, A., Mizoguchi, T., Okamoto, T., Hirano, Y. (2017) Forest Ecology and Management 399, 64–73.
Takahashi, M., Sakata, T., & Ishizuka, K. (2001) Water, Air, and Soil Pollution 130(1–4), 727–732.

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2020年8月3日作成

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