研究課題
コウヨウザンが80年間で土壌に貯留した養分は、日本の従来の植栽樹種のそれに匹敵するか?
研究組織
代表者 | 谷川東子(名古屋大学大学院生命農学研究科) |
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共同研究者 | 伊藤嘉昭((株)リガク) 福島整((株)神戸工業試験場) 山下満(兵庫県立工業技術センタ-) 矢崎一史(京都大学生存圏研究所) 杉山暁史(京都大学生存圏研究所) 平野恭弘(名古屋大学 大学院環境学研究科) |
関連ミッション |
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研究概要
日本ではスギ・ヒノキが人工林面積の7割を占めるが、林業の担い手不足による手入れの放棄や遅れが、これらの木材の資産価値を損ねている。そこで、育成の手間がかからず木材価値のある樹種に変換したいという要望が、林業の現場にはある。中国原産のコウヨウザンは、成長が早く(早生樹である)、雑草木類がほぼ生えないので下草刈りが不要、萌芽再生するため木材の収穫後の再植栽も不要、シカ害に強く、建築材料にもなるという利点が脚光を浴び、日本への導入が期待されている。
しかし安易な樹種転換は、土壌と植物のミスマッチによる土壌劣化を招く恐れがある。我々は先行研究において、土壌養分を貯めるはずの樹木が、土壌の条件によってはその力を発揮できず、栄養の枯渇サイクルを招くことを示してきた(Tanikawa et al., 2014, 2017, 2018)。また早生樹は土壌養分の収奪量が大きいため、土壌を激しく消耗させることも懸念される。そこでコウヨウザン導入による土壌劣化を招かないためには、まずはコウヨウザンの土壌養分貯留能が、スギ・ヒノキに比べ遜色ないかを調べる必要がある。
そこで、コウヨウザン林の土壌における塩基性養分元素(カルシウム、マグネシウム、カリウム)の全量をスギ・ヒノキ林の土壌と比較し、コウヨウザンの土壌養分貯留能を評価することを本研究の目的とする。具体的には、裸地化後、30年以上経過した後に植栽が行われたコウヨウザン林、スギ林、ヒノキ林(いずれも約80年生)から採取した土壌を用いて、蛍光X線分析法により元素分析を行い、80年間における各元素の土壌蓄積量を明らかにする。
写真.地表が落ち葉で埋め尽くされ、雑草木類がほぼ見当たらないコウヨウザン林(調査地)
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2019年7月31日作成