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2019(平成31) 年度 生存圏科学 ミッション研究 12

更新日: 2019/07/26

研究課題

コウキクサ細胞壁多糖の機能と利用に関する研究

研究組織

 代表者 小林優(京都大学農学研究科)
 共同研究者 梅澤俊明(京都大学生存圏研究所)
飛松裕基(京都大学生存圏研究所)
鈴木史朗(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御
  • ミッション2 太陽エネルギー変換・高度利用
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

水生被子植物ウキクサは増殖が早く、年間ヘクタールあたり乾物生産量は最大で100トンに及ぶ。この生産性は熱帯早生樹の数倍に相当し、ソルガムのような大型イネ科バイオマス植物に匹敵する。加えて、高デンプン含量(乾燥重量あたり10–30 %)かつ低リグニン含量(1 %程度)という特性を有し、バイオマスエタノールの生産原料として有望である。

ウキクサ細胞壁は希少糖であるアピオースに富み、コウキクサ(Lemna minor)ではその含量は細胞壁重量の10 %以上に達する。ウキクサ亜科に属する種間で比較すると、細胞壁アピオース含量と成長速度の間に正の相関が認められる。したがってウキクサの細胞壁に著量含まれるアピオースはバイオマス生産性を左右する何らかの重要な役割を果たしていると推定されるが、その実態は全く明らかにされていない。我々はこれまでにコウキクサの細胞壁からアピオースを主要構成糖とするペクチン質多糖を単離し、その構造や性質の解析を進めてきた。この多糖は従来からアピオガラクツロナンとして知られている多糖と類似しているが、糖組成には違いがあり、同一物質であるか未だ明らかではない。そこで本研究では、このアピオース含有多糖の分子構造を解明し、生理機能について解析する。我々はすでにアピオース生合成酵素の発現が抑制されたRNAi発現抑制株を取得しており、その表現型解析を通じて、アピオース含有多糖の機能を推定する計画である。またこのアピオース含有多糖はホウ酸と結合しゲル化する性質があるため、排水等からホウ素を除去するホウ素吸着剤としての利用可能性についても検討する予定である。これらの研究は、ウキクサが有する高いバイオマス生産能力を支えるメカニズムの一端を理解することを通じて太陽エネルギーの高率的な変換利用に寄与し得ると同時に、環境中への放出が制限されるホウ素の除去あるいは回収に利用可能な新規生物素材の獲得につながる可能性がある。

小林優: 2019(令和元)年度生存圏ミッション研究 図無菌培養中のコウキクサ

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2019年7月26日作成

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