研究課題
ゴム製固定具を用いたインドネシア産ウリン材の接合法の開発
研究組織
代表者 | 梶川翔平(電気通信大学大学院情報理工学研究科) |
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共同研究者 | 金山公三(京都大学生存圏研究所) 梅村研二(京都大学生存圏研究所) 田中聡一(京都大学生存圏研究所) 林田元宏((株)林田順平商店) 山名田敬太((株)林田順平商店) |
関連ミッション |
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研究概要
インドネシア産のウリン材は、高強度かつ耐腐朽性に優れるが、需要がない短尺材が大量廃棄されている。これは、持続的発展が可能な生存圏の構築のため、看過できない問題である。解決策として、材の接合による短尺材の長尺化が考えられる。さらに、中・長尺材の接合による超長尺化は、利用用途の拡大につながる。しかしながら、高強度なウリン材に対して、一般的な木材接合法にみられる複雑な継ぎ手加工を施すことは困難である。
申請者らは、ウリンのような高強度材に対して有効な接合法を開発するため、継ぎ手形状が単純な相欠き継ぎに基づき、高い強度が得られる手法・条件について検討している。相欠き継ぎにおいて、部材に曲げ荷重が加わると、図1(a)に示すように、部材間に隙間cが生じ、部材同士の接触面積は減少する。この時、部材間に摩擦力Ffが生じないため、ボルト部に力Fbが集中し、破断に至る。接触面積の増加によって、応力集中を抑制するためには、継ぎ手部寸法の加工誤差をゼロにし、隙間cが生じないようにする必要があるが、現実的に不可能である。
本研究では、上記の隙間発生の抑制のため、図1(b)に示すように、部材間に対するくさびの挿入を提案する。提案手法の場合、曲げ時における部材の逃げを完全に抑制できるため、くさびを介して部材同士は接触する。接触面積が広いと、接触部におけるFfが増加するため、ボルト部への力の集中を抑制できる。また、くさびの材質として、ゴムなど、弾性率が低く柔らかい材料を採用することによって、部材とくさびの接触によって生じる応力集中の抑制が期待できる。
提案手法においては、図2に示すように、くさびの硬さおよび挿入時の力Fkが重要である。くさびの硬さが適切である場合、部材はくさびに適度にめり込み、広範囲にわたって摩擦力Ffを作用させることができる。しかしながら、くさびが硬すぎると応力集中にともなう破壊が生じやすく、柔らかすぎるとくさびから十分な反発力Fcを得られないためFfが低下する。また、適切な力Fkでくさびを弾性変形させながら挿入すると、曲げ荷重が加わった際も、くさびの弾性回復が生じるため、くさびと部材はほぼ全面で接触する。しかしながら、挿入力Fkが大きすぎると、Fcが過大となる。
上記を踏まえ、本研究では主に、「(1)くさび硬さが接合強度に及ぼす影響」および「(2)くさび挿入荷重Fkが接合強度に及ぼす影響」について、実験的に調査を行うことによって、適正なくさびの硬さおよび挿入荷重を明らかにする。次に、くさび挿入の有効性について検証するため、「くさび無し」および「くさび有り」のそれぞれの場合において、「(3)隙間c(ボルト穴径dh-ボルト径db)が接合強度に及ぼす影響」を調査する。くさびが適切に働くと、接合強度は加工誤差などによって生じる隙間cの影響を受けないと考えられる。さらに、これらの調査に対して、有限要素解析による検討を加える。実験では見ることができない部材の応力分布を可視化し、結果の考察を行うとともに、さらなる改良案を検討する。
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2019年7月31日作成