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2018(平成30) 年度 生存圏科学 ミッション研究 9

更新日: 2018/08/29

研究課題

宇宙線防御のための環状電流を用いた磁気シールドの強度制御に関する研究

研究組織

 代表者 梶村好宏(国立明石工業高等専門学校電気情報工学科)
 共同研究者 萩原達将(京都大学生存圏研究所)
船木一幸(宇宙航空研究開発機構)
小嶋浩嗣(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション3 宇宙生存環境

研究概要

地球に住む我々人類は、地球の固有磁場と大気によって有害な宇宙線から守られてきた。しかしながら20世紀中盤以降、人類は地球の大気圏外・地球磁気圏外の宇宙空間へと活動の場を広げた結果、 宇宙線の脅威に直接曝されるようになった。今後飛躍的に増加する宇宙観測機器や探査機を、宇宙線や太陽風から防御するため、また、地球外の有人飛行を行う際に、高エネルギーの太陽風や宇宙線から身を守るための防御方法の開発は、喫緊の課題である。本研究では、太陽風プラズマや宇宙放射線からの人体保護及び宇宙機防御のための磁気シールドを、コイルの生成磁場によって形成することに加え、宇宙機から噴射したプラズマが磁場に捕捉されて生じる環状電流によって、磁気シールド性能を向上させ、制御する手法の開発と性能の定量的評価を、地上実験を用いて明らかにする。これまでに、さまざまな遮蔽技術が研究されているが、主として実壁を用いる手法で、2013年にはロシアが身体を拭くために大量にISSに常備されているウェットタオルに着目し、板状に積み重ねて作成した遮へい体によって37 %の被ばく線量の低減効果を実証している。しかしながら、ロシアの研究結果は、低エネルギー放射線を対象にしており、高エネルギー放射線、かつ時間的に変化するような太陽フレアや放射線の防御に対応するためには、エネルギー強度やタイミングに合わせてシールドの強弱を制御できることが望ましい。また、強い磁場は、逆に宇宙機に影響を与える可能性があることから、宇宙機から遠方に磁場を生成可能な環状電流を用いる必要がある。この手法にもっとも適した手法が本提案の人工の磁気シールドである。本研究は、有人宇宙活動を行う上で安全な環境を構築する点で生存圏科学に大きく関わるテーマである。

宇宙放射線から宇宙飛行士や衛星を守るための磁気シールドを、プラズマ噴射による環状電流(リングカレント)形成によって強度制御を行う手法を実験によって実証する。実験は、数値解析で得られた複数のパラメータセットを採用し、磁気シールド増強後の放射線エネルギー防御性能の定量的評価を実施する。実験は、宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所の先進プラズマチャンバーを用いて行う計画である。

実験装置は、図に示されるように、太陽風プラズマ流および宇宙放射線を模擬する太陽風シミュレータ、磁気シールドを模擬するコイル、そして、磁気シールド強化として用いるプラズマ噴射源の3つと、これらの駆動系、計測系から構成される。本研究では、はじめに、磁気シールドの強度の調整に必須となる環状電流の生成のための安定的なプラズマ生成と放出を行うためのプラズマ源の開発を目的として、プラズマ源の製作とプラズマ生成の確認を行う。プラズマ生成の確認では、放出されるプラズマの密度や温度、速度の測定に加え、その分布についても計測し、プラズマ源の定量的な評価を行う。その後、磁気シールド効果を測定するため、プラズマ噴射前後の磁束密度分布の測定およびコイル中心(宇宙機の内部)に突入してくるプラズマ粒子のエネルギーと密度を測定するための実験を行う。

梶村好宏: 2018(平成30)年度生存圏ミッション研究 図

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2018年8月29日作成

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