研究課題
森林生態系を循環する土壌カルシウムの深さは、土壌酸性度傾度に依存するか?
研究組織
代表者 | 谷川東子(国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所関西支所) |
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共同研究者 | 伊藤嘉昭(京都大学化学研究所) 福島整(株式会社神戸工業試験場) 山下満(兵庫県立工業技術センタ-) 矢崎一史(京都大学生存圏研究所) 杉山暁史(京都大学生存圏研究所) 平野恭弘(名古屋大学大学院環境学研究科) |
関連ミッション |
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研究概要
森林土壌のカルシウム含量は、土壌に生育する菌類、土壌動物、河川の甲殻類の種多様性やバイオマスに影響を与えるとともに、土壌酸性化の緩和や土壌有機物の滞留時間にも関与する。そのため人工林のような人が管理する生態系では、森林管理手法の不適合性に基づく土壌カルシウムの損失を、極力抑制する必要がある。
我々は先行研究において、①カルシウム含量が高く酸性度の低い土壌をもつスギ林(図 1における「肥沃で酸性度の低い土壌」。これを第1グループと呼ぶ)では、20年後に土壌はますますカルシウムを貯留していたこと、②カルシウム含量が低く酸性度の高い土壌をもつスギ林(図 1における「痩せて酸性度の高い土壌」。これを第4グループと呼ぶ)では、20年を経てますますカルシウム含量が低くなり土壌酸性化が進むことを見出した。この相反する現象は、「スギ林における土壌-植物間相互作用は、土壌酸性度についての正のフィードバック効果をもたらすこと」を意味している(Tanikawa et al., 2014)。また第4グループのスギ林では、植物可給性の形態である交換性カルシウムの土壌ストックの低さに応じて葉のカルシウム含量が低く、土壌―植物系で循環するカルシウム量は低く維持されていると推察された(Tanikawa et al., 2017)。しかし両グループとも、表層土では水和したカルシウム形態が主体であり、植物体経由あるいは鉱物風化や降雨により土壌にもたらされた(即ち森林生態系を循環してきた)カルシウムであることが、高分解能2結晶分光分析法によって明らかになった(Tanikawa et al., 2017)。
そこで本研究では、表層土のみならず下層土でも主要なカルシウム形態は水和しているか、あるいは水和していないか?を確認することで、より深い層位まで「循環系に入っているカルシウム」が主体であるかどうか?を明らかにできると考え、深度別土壌のカルシウム形態を高分解能2結晶分光分析法によって計測する。とくに第1グループと第4グループの比較により、土壌の肥沃度・酸性度勾配にカルシウム循環深度が依存するのかを明らかにする。カルシウムの循環深度のグループ間差は、各グループにおけるカルシウム循環の特徴を説明しうる要素として重要であると考えている。
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2017年8月17日作成