研究課題
コウキクサが生産するホウ素結合多糖の特性解析と生理機能解明
研究組織
代表者 | 小林優(京都大学農学研究科) |
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共同研究者 | 梅澤俊明(京都大学生存圏研究所) 飛松裕基(京都大学生存圏研究所) 鈴木史朗(京都大学生存圏研究所) |
関連ミッション |
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研究概要
近年、バイオマス燃料の生産原料、廃水浄化、家畜飼料等に利用し得る有用植物として、水生被子植物であるウキクサが注目を集めつつある。増殖が速く年間ヘクタールあたりの乾物生産量が70–100 tに達し得ること、デンプン含量が比較的高い一方でリグニン含量が低く、糖化効率が高いこと、更に畜産排水や下水を栄養源として増殖可能である等の性質から、特にバイオマスエタノール生産の原料植物として有望視されている。
ウキクサは細胞壁にホウ素(B)を多量に蓄積する性質があり、その含量は一般的な植物の数十倍に相当する1 mg B g−1細胞壁にも達する。我々はこれまでに、このBはウキクサに特有のペクチン質多糖アピオガラクツロナン(AG)をホウ酸ジエステル結合で分子間架橋し、ゲル化させている可能性が高いことを見出した。このホウ酸-AGゲルの生理機能・存在意義は何か、またその形成・維持のためにどのような培養条件が必要か明らかにすることは、ウキクサの栄養生理を理解し、効率的な生産を実現するために重要である。またホウ酸に対する親和性が極めて高いAGは、B吸着剤に応用可能な新規生物素材となる可能性がある。
そこで本研究では、ウキクサの一種コウキクサから抽出したAGについて、ホウ酸と結合しゲル化するための条件や安定性、B結合容量等の諸性質を明らかにする。また、ホウ酸-AGゲルの合成抑制を目的として、AGの主要構成糖であり、ホウ酸結合部位と推定されるアピオースの合成を抑制した形質転換株を作出している。この株における細胞壁の組成変化や遺伝子発現変化、生育特性を解析することで、ホウ酸-AGゲルの生理機能を推定する。また、ウキクサ属以外の植物における同種ゲルの分布についても検討する。
コウキクサ(Lemna minor) Bar:3 mm
アピオガラクツロナンの推定構造
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2017年7月31日作成