研究課題
ヒノキの葉および幹内貯水量と蒸散への寄与度の評価
研究組織
代表者 | 小杉緑子(京都大学農学研究科) |
---|---|
共同研究者 | 鎌倉真依(京都大学農学研究科) 東若菜(京都大学農学研究科) 立石麻紀子(鳥取大学乾燥地研究センター) 高橋けんし(京都大学生存圏研究所) |
関連ミッション |
|
研究概要
研究目的
ヒノキ、スギなどの針葉樹の高木は、樹高に従って気孔開度の指標となる群落コンダクタンスが低下することが知られている。また林野庁の森林資源現況調査より、ヒノキはスギよりも早期に、樹齢50年を超えるころから炭素固定速度が衰えることも知られている。一般的に、樹木が気孔開度を維持することは光合成速度を維持することにつながり、樹勢とも大きな関係があるが、ヒノキが高木になるに従い水輸送に困難が生じることが、気孔開度の低下や炭素固定能の低下を引き起こすと考えた。一方で、これまでの研究から、ヒノキやスギでは幹の樹液流速が、蒸散速度に比べて数時間の遅れを持ってピークに達することが分かっており、水輸送に困難が生じた際に、葉や幹などの樹体に貯留された水が蒸散による失水を賄うために使われ、吸水の遅れを補填していると考えられる。そこで、ヒノキはスギに比べて樹体内貯水量(特に葉内貯水量)が小さいことが、スギに比べて炭素固定能の低下時期が早いことの原因となっているとの仮説を立てた。本研究では、ヒノキの葉および幹内貯水量と蒸散への寄与度を評価し、ヒノキの水輸送の実態を明らかにするとともに、先行研究のスギと比較することにより、この仮説の一部を検証する。
スギ・ヒノキ林(うち97 %が人工林)といった常緑針葉樹林生態系は、我が国国土の22 %を占めている。本研究は、スギ・ヒノキの水輸送機能および炭素固定能を明らかにすることで、“老齢期”を迎えた我が国の人工林の生態系機能の理解へ結びつけるという点で、「ミッション1:環境診断・循環機能制御」に深く関わる課題と位置づけられる。同時に、我が国の将来的な森林環境の保全や森林資源の管理手法に資する基礎情報を得るという点で、「ミッション4:循環材料・環境共生システム」とも関連する。
研究計画
桐生水文試験地(滋賀県大津市)においてヒノキの蒸散速度、吸水速度、葉・幹・根各部の水ポテンシャル、葉・幹各部の貯水量およびその日変化を測定し、ヒノキの樹体内貯水量と蒸散への寄与度を算定し、樹体内貯留水の役割を評価するとともに、先行研究のスギと比べることで、両者の水輸送戦略について比較解析を行う。
図 1 樹液流速の設置風景
ページ先頭へもどる
2017年8月3日作成