研究課題
天然系接着剤を用いた木質系粉末の三次元形状部品成形技術の開発
研究組織
代表者 | 梶川翔平(電気通信大学大学院情報理工学研究科) |
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共同研究者 | 金山公三(京都大学生存圏研究所) 梅村研二(京都大学生存圏研究所) 田中聡一(京都大学生存圏研究所) |
関連ミッション |
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研究概要
持続的発展が可能な「生存圏」の構築に向け,循環型資源である木質系材料の有効利用は,重要な意味を持つ.木質系材料は,木材チップや粉末などに石油由来の樹脂などを混合して製造されているが,化石資源に依存した社会からの脱却のためには,100 %天然由来の資源を原料として用いることが望ましい.このような背景より,天然系接着剤に関する研究が行われている.例えば,糖類に対して,ポリカルボン酸,リン酸化合物またはタンニンなどの天然系資源を混合したものを接着剤として利用とすると,石油系接着剤を用いた場合に匹敵する強度や耐水性を持つパーティクルボードが作製可能である.
一方,金属やプラスチックを代替する工業材料として,木質系材料の利用用途の拡大していくためには,ボードのみならず,より三次元的な複雑形状を持つ成形品を作製できることが望ましい.複雑形状を持つ部品を成形するためには,材料の接着性に加え,流動性が必要である.しかしながら,天然系接着剤を木粉に添加した場合の流動性については調査がなされておらず,三次元的な形状を持つ部品の成形も行われていない.また,接着剤の原料として用いられる糖類は,加熱によって流動性が発現することが知られているが,ポリカルボン酸などと混合し,接着剤とした場合における流動性の変化も興味深い.
本研究では,天然系接着剤を混合した木質系粉末の流動性の調査,および成形加工を行い,高い成形性を発現させるのに適当な接着剤混合方法および成形条件を明らかにする.さらに,成形品の強度および耐水性について調査を行い,汎用プラスチックに匹敵する材料特性を持つ100 %天然由来三次元形状部品の製造を目標とする.以下に,実験の概要を示す.
①天然系接着剤を混合した木質系粉末の流動性に関する調査
本調査では,木質系粉末の流動性の観点より,適正な天然系接着剤,接着剤の混合率を明らかにする.天然系接着剤としては,ポリカルボン酸,リン酸化合物またはタンニンなどに糖を混合した接着剤を用いる.木質系粉末としては,無処理のものに加え,蒸煮処理によって流動性を高めたものを使用する.同接着剤の接着性には,木質系粉末に含まれる糖類の種類や量が影響する.このため,予め実験に用いる無処理および蒸煮処理後の木質系粉末の糖類量を,熱分析やガスクロマトグラフィによる測定などによって把握しておく.天然系接着剤を混合した木質系粉末は,図1に示すようなキャピラリーを用いた試験を行い,材料の流出挙動より流動性を評価する.この際に,金型温度を試験パラメータとし,高い流動性が発現する温度条件についても調査する.
②天然系接着剤を混合した木質系粉末の成形性に関する調査
①の調査において,良好な結果が得られた天然系接着剤を木質系粉末と混合し,成形性を評価するとともに,適切な成形条件を明らかにする.成形性の評価として,図2に示すような金型を用いた後方押出しを行い,円筒状の容器の作製を試みる.得られた容器については,力学試験,および煮沸試験によって強度および耐水性を評価する.なお,力学試験に関しては,容器の底面もしくは側面を短冊状に切り出した試験片を用いる.成形条件は,加圧力,金型温度および加圧時間である.加圧力を高めると,金型内における材料の充填性が向上するとともに,成形品の密度上昇にともなう強度向上が期待できる.金型温度および加圧時間は,材料の流動性,接着性および成形品の耐水性に影響する.材料の流動性を成形可能なレベルに維持しつつ,接着性および耐水性が十分に発現する条件を明らかにする.
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2016年8月4日作成