研究課題
赤道大気レーダー・ライダー・オゾンラジオゾンデ観測による大気乱流特性の国際共同研究
研究組織
代表者 | 橋口浩之(京都大学生存圏研究所) |
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共同研究者 | 山本衛(京都大学生存圏研究所) 阿保真(首都大学東京システムデザイン研究科) 柴田泰邦(首都大学東京システムデザイン研究科) 柴垣佳明(大阪電気通信大学) Hubert Luce(Toulon-Var Univ./京都大学生存圏研究所) Richard Wilson(LATMOS, CNRS) Dalaudier Francis(CNRS) Delanoe Julien(LATMOS) Hauchecorne Alain(CNRS) |
関連ミッション |
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研究概要
乱流混合は熱や物質の鉛直輸送に寄与する重要なプロセスであるが、そのスケールが極めて小さいことから観測が難しい現象の一つである。気象予報モデルにおいても乱流を直接解像することはできないため、パラメータ化して取り扱われており、観測から定量的に評価することが求められている。京大生存研(RISH)と仏LATMOS及びToulon大の研究グループは協同でMUレーダーを中心とした大気乱流の観測的研究を続けてきた。Luce博士を中心として、MUレーダーを用いた周波数イメージング観測手法の開発・改良が重ねられ、現在ではレンジ分解能が飛躍的に向上した観測が可能となっている。大気レーダーによる周波数イメージング観測は現在のところ乱流を最も正確に映像化でき、それらの発生・発達・形成メカニズムや、メソ~総観規模現象との関連を研究する上で最も強力な測定手段である。例えば、雲底下でケルビン・ヘルムホルツ(KH)不安定に伴う乱流が持続的に存在する様子がイメージ化され[Luce et al, 2010]、さらにKudo[2013]によって数値シミュレーションにより再現され、その発生機構や発生条件が示されている。
一方、赤道域は地表へ入射する太陽放射エネルギーを最も強く受ける領域で、地球大気の各種現象の駆動源であるが、その中でも特にインドネシア海洋大陸域では、太陽光による島嶼(とうしょ)の加熱と周辺の海洋からの水蒸気供給によって、地球上で最も対流活動が活発で、対流や大気波動の砕波に伴って乱流が発生している。2001年にインドネシア共和国西スマトラの赤道直下に完成した赤道大気レーダー(Equatorial Atmosphere Radar: EAR)の周囲にはライダーや気象レーダー等が整備され、赤道大気研究の一大拠点である「赤道大気観測所」が構築されている。熱帯における対流圏界面は、近年、高度14~18km辺りに熱帯対流圏界層(Tropical Tropopause Layer: TTL)と呼ばれる対流圏とも成層圏ともつかない熱帯域特有の遷移領域が存在するとの考え方が一般的である。TTLは、光化学・力学・雲物理・放射の諸過程が相互に作用し、地球規模の成層圏と対流圏間の物質交換に影響する重要な領域である。これまで、EAR観測からTTLにおいて発生した乱流によって、対流圏と成層圏の間で気塊の交換が非可逆的に起こっていることなどが見出されてきた。
本研究では、MUレーダーで開発されてきた周波数イメージング観測技術をEARに適用し、高分解能での大気乱流観測を実施する。同時に、首都大のオゾンライダーやレイリーライダーも運用し、またオゾンラジオゾンデを放球する集中観測を実施する。中緯度と熱帯域の乱流特性の相違について明らかにする。
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2015年7月22日作成