研究課題
イネ根域のカリウム条件が根におけるカリウム輸送体発現量に及ぼす影響の解明
研究組織
代表者 | 藤村恵人 (農研機構東北農業研究センター) |
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共同研究者 | 上田義勝 (京都大学生存圏研究所) 石川淳子 (農研機構作物研究所) 杉山暁史 (京都大学生存圏研究所) |
関連ミッション |
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研究概要
2011 年 3 月 11 日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故により福島県を中心とした広範囲に放射性物質が拡散し、日本農業に大きな影響を与えた。拡散した種々の核種の中でも放射性セシウムによる農地や農作物汚染が深刻であり、表土剥ぎ取り等の農地除染による対策がとられている。また、農作物による放射性セシウムの吸収は土壌中交換性カリウム含量の増加に伴い減少するため、カリウム施用による農作物のセシウム吸収抑制が行われている。その結果、2013 年産玄米については福島県内の全袋検査において 99 % 以上で基準値を下回った。しかしながら、一部地域においてはカリウム施用を徹底したにも関わらず基準値を超過する例があり、その要因は明らかにはなっておらず、旧避難指示区域等での営農を再開する上での障害となっている。旧避難指示区域等における水田の不作付けは、主食である米の供給に加えて地域の植生など環境にも影響する生存圏全体の問題である。有効で効率的な吸収抑制対策を確立し営農を再開するために、作物による放射性セシウム吸収の機作を解明することが急務である。
放射性セシウムはカリウム輸送体を介して体内に取り込まれると考えられ、輸送体をめぐってセシウムとカリウムは競合関係にある。この競合はいわゆる「拮抗阻害」として説明でき、上記のカリウム施用による農作物のセシウム吸収抑制はこの拮抗阻害を利用している。しかしながら、この拮抗阻害については不明な部分もあり、カリウム施用によるセシウム吸収抑制がどの程度まで有効なのかは明らかではない。我々は玄米中の放射性セシウム濃度と土壌中の交換性カリウム含量の関係を説明するために、植物生理学的に拮抗阻害を表す式に「交換性カリウム含量が低い場合に、カリウム輸送体発現量が増加することによりセシウム吸収がさらに促進される」という仮説を組み込んで、イネによる放射性セシウムの吸収モデルを構築した。構築したモデルは水田における調査結果をよく説明できたものの、仮説の検証は行われていない。本研究では、異なるカリウム条件で栽培したイネにおけるカリウム輸送体の発現量を解析し、仮説の検証を行う。
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2014年7月15日作成