研究課題
多糖類由来の高分子ナノファイバーによる腸管内環境の改善に関する研究
研究組織
代表者 | 谷史人 (京都大学農学研究科) |
---|---|
共同研究者 | 松村康生 (京都大学農学研究科) 松宮健太郎 (京都大学農学研究科) 矢野浩之 (京都大学生存圏研究所) 阿部賢太郎 (京都大学生存圏研究所) |
関連ミッション |
|
研究概要
現代の先進国における食は高カロリーであり、生活習慣病を予防し得るような生理機能が求められている。一方で、食に関する嗜好は極めて多様化しており、食感などにおいても常に新しいターゲットが模索されている。食品に関して、このような生理機能面および加工面での要求の両方あるいはどちらかを満たすためには、古くから用いられてきた原料素材や成分だけでは対応が難しく、新たな素材が広く求められている。申請者らは、生存圏研究所において開発された木片やパルプからのセルロースナノファイバー(CeN)や、甲殻類の殻からのキチンナノファイバー(ChN)を食品へ利用することを試み、これらのナノファイバーが食品加工素材として優れた物性を発現すること、腸管内の炎症を抑制できる可能性を示してきた。このような成果に基づき、今年度は、高分子ナノファイバーを食品系へ応用する一環として、セルロースやキチンナノファイバーを用いた素材によって腸管内の環境がどのように変動するのか、特に、腸内細菌とそれらの代謝産物の変動に焦点を当てて検討するとともに、我々の生体に有用な栄養成分や生体防御成分を効率よくデリバリーできる素材特性について検討する。
I. ナノファイバー摂取の腸管内環境に及ぼす影響
1) 脂質代謝に及ぼす影響
ナノファイバーを摂食させたマウス群では、通常の線維状セルロース摂取群に比べて体重増加が抑えられた原因が、腸管における胆汁酸の再吸収阻害による効果に起因するか否かについて検証を行う。両群マウスの血糖値、血中の遊離脂肪酸量、LDL 値、HDL 値やコレステロール量ならびに糞便中コレステロール量を測定比較する。
2) 短鎖脂肪酸(SCFAs)の産生に及ぼす影響
大腸粘膜固有層における炎症誘発性の Th17 細胞の CD4+ T 細胞に占める頻度が、ファイバーの摂取形態によって変わることが、腸内細菌によるナノファイバーの資化性と関係があるかについて考察するため、盲腸や大腸内容物に含まれる SCFAs(酢酸、プロピオン酸、酪酸)量の変動についてガスクロマトグラフィーを用いて定量解析する。
II. 有用生理活性物質のデリバリー素材としてのナノファイバー
1) 抗炎症性・抗酸化性物質のデリバリー素材としての応用
活性型ビタミン D の 1,25-ジヒドロキシビタミン D3[1,25(OH)2D3] および抗酸化物質のレスベラトロールのナノファイバーとの相互作用を解析する。1,25(OH)2D3 とレスベラトロールをナノファイバーと混合し、様々な均質化法で包摂化を試み、包摂体のキャラクタリゼーションを行う。今回のターゲット物質が脂溶性のため、一部、界面活性物質の併用も検討する。
2) フレーバーリリースのための素材開発
ナノファイバー分散液は、一般の食品用増粘剤の分散液とは異なった流動特性を示すことから、ナノファイバーが食品用増粘剤と異なったフレーバーリリース挙動を示すのか検討を行う。
ページ先頭へもどる
2014年7月29日作成