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2014(平成26) 年度 生存圏科学 ミッション研究 14

更新日: 2017/09/19

研究課題

雑草をめぐる生物間相互作用ネットワークの解明による省力化有機栽培技術開発

研究組織

 代表者 高林純示 (京都大学生態学研究センター)
 共同研究者 矢崎一史 (京都大学生存圏研究所)
小出陽平 (京都大学白眉センター)
塩尻かおり (京都大学白眉センター)
圭佑 (京都大学農学研究科)
小澤理香 (京都大学生態学研究センター)
歩 (北海道大学低温化学研究所)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)
  • ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)

研究概要

化学肥料や農薬に依存したこれまでの農業は、周囲の自然に甚大な負荷をかけ、我々だけでなく様々な動植物に負の影響を与えてきている。また薬剤抵抗性の害虫が多発し、薬剤に頼った防除には限界がある。生存圏環境の保全のためにも環境に優しい省力化有機栽培技術開発が不可欠である。

本研究は防除の対象でしかなかった雑草を耕作体系に取り込み、雑草を起点とする昆虫・作物間の相互作用ネットワークを利用した省力的かつ環境調和型の有機農業技術の確立を目指すものである。注目する現象は、被害植物の匂いが隣接する植物のパフォーマンスに影響を与える現象「植物間コミュニケーション」である。本研究では、雑草の草刈りにおける匂いに注目し、雑草-作物間コミュニケーションを水田で解明する。またそれを利用したイネの有機栽培の基盤を構築することを目的とする。

本研究では、生存圏における農業技術の新展開において不可欠な知見である農生態系生物間相互作用・情報ネットワークを、植物間コミュニケーションの視点から明らかにする。特に今まで防除の対照でしかなかった雑草が省力化有機栽培において重要であることを生態レベルから分子レベルまで網羅して実証する。除草で活性化する作物遺伝子を解明することは新たな生産技術のシーズにつながる。本研究は、環境を保全しつつバイオマスを利活用するシステムの構築でといえる。また、これまでの我々の研究結果より、雑草の匂いが媒介する植物間コミュニケーションによって光合成の向上が見込まれる。これは太陽エネルギー利用効率を向上させるものである。

我々はこれまでに、イネにおいて、刈り取られた周辺雑草の匂いを幼苗期に受容させると、生育期間中の葉の被害が低下し、収量が高まることを明らかにしてきた。これらの基盤的成果をもとに水田を対象として継続して研究を行う。具体的には、京都大学農学部圃場でイネを、刈り取った雑草の匂い暴露区と対照区に分けて栽培し、葉のRNAを毎週サンプリングする。対照区との比較によって雑草由来の匂いの暴露によってどのような遺伝子発現の変化が生育期間をとおして誘導されるかが解明できる。また、被害度の調査、収穫量の調査も併せておこなう。

匂い処理を行った水田では、葉色(クロロフィル量)が増加することも予備試験において明らかになっている。光合成能の向上は、農業生産において非常に重要な課題であり、雑草の匂いでの光合成能の向上の解明は、作物生産性を高める革新的な技術シーズとなる。匂い受容と光合成との関連性を詳細に検討する。

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2014年7月28日作成

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