研究課題
海洋性大気混合層の影響を受けた上層安定層の日本沿岸における出現特性
研究組織
代表者 | 児玉安正 (弘前大学理工学研究科) |
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共同研究者 | 石田祐宣 (弘前大学理工学研究科) 橋口浩之 (京都大学生存圏研究所) 古本淳一 (京都大学生存圏研究所) 佐々木耕一 (日本原燃(株) 環境管理センター) |
関連ミッション |
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研究概要
通常、対流圏では気温は上方ほど低下するが、気温が低下しない、あるいは上昇する安定層と呼ばれる層が現れることがある。安定層では、大気の鉛直運動が起こりにくく、物質の鉛直拡散が著しく抑えられる。中緯度海洋には、上端に下層雲と安定層を伴う海洋性大気混合層(Marine atmospheric Boundary Layer: MBL)が広く分布している。MBL が沿岸域に侵入すると、地面から離れた安定層(以下,上層安定層と呼ぶ)が現れ、それは発電所等に設けられている排気筒より高い場合が多いため排気の拡散希釈に影響する。また MBL に伴う下層雲が日射を遮るため、日射量や気温の日変化に影響を与える。東北地方太平洋側に冷涼寡少な天候をもたらすヤマセは MBL に伴う現象の典型である。本研究では、ヤマセを対象に六ヶ所村で高層気象観測を実施し、上層安定層の高度を求め、その日変化特性や鉛直拡散に与える影響について検討を行う。我々は京都大学生存基盤科学研究ユニットのサイト型機動研究(平成 22–23 年度)により、平成 22 年 10 月にウィンドプロファイラーを太平洋岸の青森県六ヶ所村に設置し、連続観測を開始した。ウィンドプロファイラーでは、時間分解能 1 分・高度分解能 100 m で鉛直流を含む風速 3 成分の高度プロファイルを連続観測することが可能である。平成 24 年 3 月には、同村内の日本原燃(株)再処理事業部構内にウィンドプロファイラーを移設し、RASS(電波音波併用法)による風・気温プロファイルの連続観測を継続中である。ウィンドプロファイラー連続観測に加えて、毎年夏季に、ラジオゾンデ(気圧・気温・水蒸気・風向・風速)等を用いた集中観測を実施し、ヤマセの実態に迫りつつある。六ヶ所村は、太平洋と陸奥湾を結ぶ地形的な鞍部にあり、ヤマセの通り道となるため、ヤマセ観測の適地である。ヤマセについて、これまでの我々の研究から、MBL の安定層高度が沿岸陸上の天候に影響を与えることが示唆されている。本研究では、観測されたヤマセの安定層高度を沖合海上の推定逆転強度(EIS)との関係を検討し、MBL の影響という視点から、沿岸域のヤマセに伴う上層安定層の振る舞いや天候への影響を検討する。
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2014年7月15日作成