研究課題
海洋微生物由来酵素群による森林バイオマス成分リグニンの分解反応解析
研究組織
代表者 | 大田ゆかり (独立行政法人海洋研究開発機構) |
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共同研究者 | 渡辺隆司 (京都大学生存圏研究所) 秦田勇二 (独立行政法人海洋研究開発機構) 西村裕志 (京都大学生存圏研究所) 片平正人 (京都大学エネルギー理工学研究所) 渡邊崇人 (京都大学生存圏研究所) 曲琛 (京都大学生存圏研究所) 齋藤香織 (京都大学生存圏研究所) |
関連ミッション |
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研究概要
地球温暖化と化石資源の枯渇問題を背景として、再生産可能なバイオマスから燃料アルコールや化学品などを作り出すバイオリファイナリーの構築が緊急性の高い問題として注目を集めている。とりわけ、食糧と直接競合しない木質バイオマスを持続的に利用して、バイオ燃料や高付加価値物を同時生産することは、炭素循環に大きな負荷をかけない持続的な生存圏の創成にとって極めて重要である。バイオリファイナリーの推進にはバイオマスの成分分離技術や、分離した成分の構造解析が不可欠であるが、植物細胞壁を構成する多糖類は不規則高分子のリグニンによって固められた複雑な構造をとっており、リグニンの高選択的な分解が困難なため、各成分の精密な構造解析は容易ではない。特異性の高いリグニン分解法の開発は木質バイオマス成分変換を産業化する大きな鍵となっている。
最近、申請者らは、駿河湾の海底沈木から分離した海洋性細菌 Novosphingobium sp. MBES04 株から、リグニンモデル 2 量体中の β-O-4 結合の選択的開裂が可能な 6 つの酵素の遺伝子セットを取得し、それらを用いた組換え酵素生産に成功するとともに、この酵素反応を利用した機能性ポリマー原料の生産法を開発した。見出した酵素群による β-O-4 結合開裂は陸域でリグニン分解の中心的役割を果たす白色腐朽菌のラジカル反応による分解様式とは異なり、特異的な β-脱離反応である。この酵素反応は、α、β 位炭素のキラリティーの識別が可能であり、厳密な基質特異性を持つ点で既存の化学反応とも大きく異なっている。
本研究では、構造の異なるリグニンモデル化合物や合成リグニン、単離リグニンなどを基質として上記酵素群を作用させ、その作用点や反応機構を、超高感度のクライオ NMR や質量分析装置で解析することにより、海洋から分離した細菌由来の酵素が、新しいリグニン変換ツール、構造解析ツールとなることを示して、バイオリファイナリーを推進するとともに、海洋圏、人間生活圏、森林圏をつなぐ圏間融合研究を発展させることを目標とする。
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2014年7月15日作成