研究課題
精密衛星測位を用いた日本列島における水蒸気場の長期変動解析
研究組織
代表者 | 小司禎教 (気象庁気象研究所) |
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共同研究者 | 津田敏隆 (京都大学生存圏研究所) 佐藤一敏 (京都大学学際融合教育研究推進センター) 古屋智秋 (国土地理院) |
関連ミッション |
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研究概要
1. 研究の目的
本研究では、平成 24 年度生存圏ミッション研究で作成した 14 年間の可降水量データセット(1999–2012年)を、国土地理院が GPS 観測を開始した 1994 年まで遡り、20年(1994–2013)のデータセットを完成させ、気候研究に寄与することを目的とする.
2. 背景
大気水蒸気量の変化と、その気候変動への影響は気候研究にとって重要な課題である。全球気候観測システム(GCOS: Global Climate Observing System)では、全球 GCOS 基準高層観測網(GRUAN: GCOS Reference Upper Air Network)を構築中で、全球航法衛星システム(GNSS, Global Navigation Satellite System)による水蒸気観測は必須項目である。
米国の全球測位システム(GPS: Global Positioning System)を始めとする GNSS は、原子時計による高精度時刻情報に保証され、安定した精度で水蒸気情報の解析が可能とされている。しかし、アンテナの機種に依存する位相中心の入射角依存性(PCV: Phase Center Variation)、衛星軌道(位置、時計)の精度、地球回転や潮汐のモデル精度などに大きく影響を受ける。近年、国際 GNSS サービス(IGS: International GNSS Service)を中心に、1990 年代にさかのぼった GPS 衛星軌道の再解析、高精度アンテナ PCV の検証が進み、また衛星観測を利用した地球回転や潮汐モデルの高度化が急速に進展している。
3. 研究の進め方
本課題では、衛星測地学の最新の知見を利用し、1994 年以後の国土地理院の GNSS 観測網(GEONET: GNSS Earth Observation Network)、及び IGS 観測網データの再解析を実施する。高層ゾンデ観測との長期比較を実施し、高層ゾンデの機種に依存する特性の評価を行う。また、国土地理院が Bernese ソフトウェアを用いて解析した結果(F3解)との比較を行い、解析手法に依存した誤差を探る。
4. 研究の効果
本課題の推進により、高精度時刻情報によって保証された、20 年にわたる均質な水蒸気情報データベースが構築できる。これによって、高層ゾンデ観測や、マイクロ波放射計、あるいは異なる解析手法による GNSS 水蒸気情報の精度等、歴史的較正が可能となる。日本列島上空の、空間的に密な水蒸気の長期変動を解析するためのデータが得られる。
図.GEONETのID. 92110(つくば1)点におけるPWV長期変動(1994–2012年)。米国ジェット推進研究所(JPL: Jet Propulsion Laboratory)で開発されたGNSS解析ソフトウェアGIPSY OASIS IIを用いて、5分間隔の遅延量解析を実施し、可降水量に変換した。衛星軌道の暦情報は1994年については米国ジェット推進研究所の精密暦、1995年以後はIGS精密暦を使用。変換に必要なアンテナ位置における気圧は気象庁地上気象観測、気温はAMeDAS観測から内挿したものを用いた。
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2013年7月30日作成