研究課題
1926年から44年間にわたる太陽活動CaIIK画像データベースの整備と太陽活動長期変動の研究
研究組織
代表者 | 上野悟 (京都大学理学研究科) |
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共同研究者 | 北井礼三郎 (京都大学理学研究科) 金田直樹 (京都大学理学研究科) 浅井歩 (京都大学宇宙総合学研究ユニット) 渡邉晧子 (京都大学宇宙総合学研究ユニット) 磯部洋明 (京都大学学際融合教育研究推進センター) 新堀淳樹 (京都大学生存圏研究所) 羽田裕子 (京都大学理学研究科) |
関連ミッション |
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研究概要
京都大学理学研究科附属天文台では、太陽彩層の全面観測を 1926 年以降継続してきた。長期にわたって太陽活動・彩層活動をこのような長い期間観測したものは世界的にも稀であり、貴重な一級の資料であるため、我々はこれを活用するための作業を行なって来ている。
本プロジェクト全体としての作業項目は、
- 全乾板資料の調査によるメタデータの抽出
- 全乾板資料のデジタル化とそのデータベース構築
- デジタル画像の較正作業と処理後データのデータベース構築
- メタデータの SPASE フォーマット化と IUGONET を通した公開
- 太陽活動のムービー製作による長期変動の可視化
- 太陽紫外線放射量のプロキシ指標の導出
- 太陽コロナ変動と CaIIK 変動との比較研究
- 地球上層大気加熱の長期変動の導出と太陽紫外線放射量変動との比較
となる。
オリジナル資料である写真乾板は、既に90年近く経過してその劣化が進みつつあったため、昨年度までの期間で先ずは上記1と、2のデジタル化までを完了させた。また、6 と 8 に関しては、他機関の研究経費により、別のデータセットを用いて予備的な解析・研究を進めて来ている。従って、今年度、当研究計画の枠組みにおいては、2のデータベース構築部分と、3、4、さらに、本データベースを用いた 6 や 8 の研究を推進する。
具体的に実施する内容詳細は以下の通り:
- デジタル化した画像データ(レベル 0)を公開するシステムを整備:
乾板画像をデジタル化したそのままのデータ(レベル 0)を Web 上で公開するための整備。 - デジタル画像データの較正作業と処理後データの公開システムの整備:
レベル 0 のデジタル画像データを科学的解析に迅速に適用できるよう、太陽サイズの統一、オリエンテーション補正、ゴミや露光ムラなどによる画像ムラの補正、などと言った整形を施し、レベル 1 画像データベースとして、レベル 0 と併せて Web 上で公開するための整備。 - 画像データ毎のメタデータの汎用化と検索システムへの登録:
デジタル化した各画像データ毎のメタデータ(Granule metadata)を、世界的に汎用性の高い SPASE フォーマットに変換し、IUGONET 検索システムに登録し、上記公開データを検索可能にする。 - 太陽紫外線放射量のプロキシ指標の導出:
別の研究経費のもとで進めて来た、近年のデジタル太陽彩層画像データ(Hα 画像)からプラージュ領域の面積などを測定することで太陽紫外線プロキシ指標を求める手法を応用し、より古い時代の当データセットの画像データから、同様に適切なプロキシ指標の導出を試みる。その際には近年の人工衛星による太陽紫外線分光データの変動情報も参考にする予定である。
本データセットは直接的には太陽活動・太陽彩層活動を把握する基礎資料であるが、彩層活動は太陽からの紫外線放射の指標となるものであり、地球上層大気への紫外線放射および地球上層大気加熱問題にとって重要な観測的境界条件を与えるものである。我々のプロジェクトの最終目的は、この太陽活動周期4サイクルにわたる太陽-地球環境の変遷を明らかにすることであり、生存圏科学にとって重要で基礎的な資料となるものと考えられる。本研究は、その基礎となるデータ整備とキーとなる物理量の導出を行うものである。
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2013年7月29日作成