研究課題
ウィンドプロファイラー・RASS・ライダー・ゾンデ気球観測によるヤマセの実態解明
研究組織
代表者 | 児玉安正 (弘前大学理工学研究科) |
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共同研究者 | 石田祐宣 (弘前大学理工学研究科) 橋口浩之 (京都大学生存圏研究所) 矢吹正教 (京都大学生存圏研究所) 古本淳一 (京都大学生存圏研究所) 東邦昭 (京都大学生存圏研究所) 佐々木耕一 (日本原燃(株) 環境管理センター) |
関連ミッション |
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研究概要
ヤマセは、東北地方の太平洋側で初夏から盛夏にかけてしばしば観測される背の低い(100~数1000 m の)東寄りの風であり、霧や下層雲を伴い、一般に冷涼である。長期間続くと日照不足と低温及び高湿により稲作が阻害されるため、ヤマセは地元では「飢饉風」として恐れられてきた。主食用としてタイ米を輸入するまでに至った 1993 年の大冷害でも、東北地方の冷害の主要因はヤマセであった。
ヤマセは大気や海洋・陸面の影響を受けた多様な側面を持ち、その全貌を捉えるには、様々な視点から研究を進める必要がある。例えば、ヤマセをもたらすオホーツク海高気圧やそれと上空のブロッキング現象との関係など、海上でのヤマセの振る舞いについては理解が深まりつつある。一方、陸上のヤマセについては、実用的な重要性が大きいにもかかわらず、研究例は少なく、丘陵の斜面における対流圏のごく下層の観測に留まっていた。従って、陸上でのヤマセの鉛直構造の観測が切望されていた。
我々は京都大学生存基盤科学研究ユニットのサイト型機動研究(平成22–23 年度)により、2010(平成22)年 10 月にウィンドプロファイラーを太平洋岸の青森県六ヶ所村環境科学技術研究所に移設し、連続観測を開始した。ウィンドプロファイラーでは、時間分解能 1 分・高度分解能 100 m で鉛直流を含む風速 3 成分の高度プロファイルを連続観測することが可能である。また、昨年 7~8 月には、ウィンドプロファイラー連続観測に加えて、ライダー・ソーダー・ラジオゾンデ観測による約 3 週間の集中観測を実施し、7 月 30~31 日におけるヤマセの吹出し初期の状況を捉えることに成功した。しかしながら、観測できたのは一例だけであり、また、気温の鉛直構造については、3 時間毎のラジオゾンデによる観測データがあるのみで、陸上におけるヤマセの実態解明には、風・気温プロファイルを含めた高分解能連続観測を実施し、多くの事例を集めることが重要である。
そこで、本年 3 月に騒音問題の恐れがない六ヶ所村内の日本原燃(株)再処理事業部構内にウィンドプロファイラーを移設し、RASS (電波音波併用法)による風・気温プロファイルの連続観測を開始した。本研究では、夏季にウィンドプロファイラー・RASS に加えて、ソーダー(接地境界層風)・ラジオゾンデ(気圧・気温・水蒸気・風向・風速)を用いた集中観測を実施し、大気数値モデルも援用して、ヤマセの実態を解明することを目指す。
青森県に設置されたウィンドプロファイラー
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2012年7月27日作成