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2011(平成23) 年度 生存圏科学 ミッション研究 17

更新日: 2017/09/20

研究課題

木質からの白金代替燃料電池用カソード触媒合成条件のPy(熱分解)-GC/MSによる最適化

研究組織

 代表者 畑俊充 (京都大学生存圏研究所)
 共同研究者 内本喜晴 (京都大学人間環境学研究科)
本間千晶 (北海道立総合研究機構林産試験場)
関連ミッション
  • ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)
  • ミッション 3 (宇宙環境・利用)
  • ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

研究概要

燃料電池カソード電極用の白金代替カソード触媒としてのカーボンアロイ触媒の研究が国内外で活発に行われている。燃料電池カソード電極以外の用途としては、自動車用排ガス触媒があげられ、今後、その需要は極めて高いと期待される。しかしながら従来のカーボンアロイ触媒は、金属錯体からなる高価な樹脂を原料に用いていたため、コスト面で実用化において大きな問題があった。現在、ナノシェル構造を形成するためにはフタロシアニン系などの高価な金属錯体が必ず必要であり、酸洗などで除去できないような金属微細粒子の存在の可能性もあり、酸素還元活性のメカニズムの完全な解明には至っていない。

セルロースは木質バイオマスの 50 % 程度を占める主成分であり、セルロースを原料として白金代替燃料電池用カソード触媒(WFC)合成が行われば、建築廃材、間伐材、製材残材などの木質系廃棄物にも対象を広げることができ、広くバイオマス資源へも応用可能である。これらの点で、本研究はこれまでとは全く違うバイオマスの未来志向型エネルギー利用であり、その合成手法に革新性が認められる。さらに、木質系成分の先進的な用途展開は、科学技術、産業、文化などでの、幅広い意味で社会に与えるインパクト・貢献を期待され、研究上の意義が極めて高い。

木質は典型的な難黒鉛性材料であり炭化しても結晶化が難しく、木質炭化物の用途展開がこれまで阻まれていたが、本課題は木質の結晶化を阻む主な原因が、木質主成分の 50 % を占めるセルロースにあることに着目した。熱分解によるガスクロマトグラフ質量分析(Py-GC/MS)によるアウトガス分析により、セルロース-メラミン複合体の加熱分解成分を無変化のまま取り出し主構成成分の解析から、燃料電池用触媒の合成最適条件を求め、得られた研究成果を木質由来のカソード触媒合成へ応用する。循環型資源である木材の熱変換によって宇宙機の運用に欠かすことのできない電池を開発する本課題は大変重要である。温暖化ガスの抑制を図ると同時に増大する電気エネルギーの需要に応える。この点において本技術は近い将来、全共に対して大きな貢献を果たすことが予想される。

畑俊充: 2011(平成23)年度 生存圏ミッション研究 図 1図 1 直パルス加熱法による WFC の合成

畑俊充: 2011(平成23)年度 生存圏ミッション研究 図 2図 2 ORR 活性評価方法と測定条件

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2011年8月3日作成

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