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2011(平成23) 年度 生存圏科学 ミッション研究 8

更新日: 2017/09/20

研究課題

超高感度溶液NMR法による木質バイオマスの丸ごと、高分解能、リアルタイム計測法の開発と応用

研究組織

 代表者 片平正人 (京都大学エネルギー理工学研究所)
 共同研究者 渡辺隆司 (京都大学生存圏研究所)
努 (京都大学エネルギー理工学研究所)
吉岡康一 (京都大学生存圏研究所)
西村裕志 (京都大学エネルギー理工学研究所)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)
  • ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)
  • ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

研究概要

化石資源の消費量を減らし、持続可能な社会を構築するために、木質バイオマスを変換・利用してバイオエネルギーや化成品を高効率で生産することが注目を集めている。木質バイオマスはセルロース、ヘミセルロース及びリグニンを主成分とするが、木材組織の中でこれらの構成物質がいかなる分子構造をとっているかを正確に把握することはできていない。木質バイオマスを微粉砕することで、有機溶媒に木材全成分を丸ごと溶かす事ができ、これを溶液 NMR 法によって解析できる事が、我々が行ったものも含めた最近の研究によって分かってきた。木材そのものに溶液 NMR 法が適用できれば、成分分離をする前の木材組織中の全構成成分の化学構造を原子レベルの高分解能で把握することが可能となる。しかしながら、溶液 NMR 法の適用は未だ緒についたばかりで、木材を均一に溶解させる溶媒の探索や溶解方法を見つける事が依然重要課題となっている。さらに、この方法でリグニンや微量成分を解析するためには、超高感度検出器を装着した NMR 装置(図 1)が必要である。NMR による生体高分子の構造解析を専門としている研究代表者は、超高感度 NMR 装置を宇治地区に昨年度 2 台導入した。これはバイオマス用としては全国でも有数の装置環境である。この装置を駆使して、NMR 研究者とバイオマス研究者が共同で、木材組織中の全成分構造を NMR で解析する基盤を確立し、さらに木材の化学変換、微生物変換へと応用・発展させて共同研究拠点活動に貢献する事を目指す。

片平正人: 2011(平成23)年度 生存圏ミッション研究 図 1図 1 超高感度検出器を装着した NMR 装置

本研究では第一に木質バイオマス中の有用物質の解析に溶液 NMR 法を適用する事を目指し、測定試料調製法の確立を行う。具体的には良好な溶液 NMR のスペクトル(図 2)を取得する為に、ボールミルした木質バイオマスをどのような溶媒系に溶かすのが最良なのかを、網羅的に調べる。良好なスペクトルを得る条件が確立したら、第二に木質バイオマス中の多様な有用物質の化学構造(分子構造)を、溶液 NMR スペクトルに基づいて原子レベルの高分解能で決定する。第三に針葉樹と広葉樹、北方系樹木と南方系樹木等の比較を行い、有用物質の化学構造や量比に差があるのかの分析を行う。第四に腐朽菌による木質バイオマスの腐朽において、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンの化学構造・量比がどのように変化するのかを溶液 NMR 法によってリアルタイムで追跡し、3 つの主成分の動態解析を行う。以上四点の研究によって木質バイオマス中の有用物質の化学構造を決定する手法を確立し、次にその手法を応用してどのような化学構造の物質が、どのような量比で存在し、それが腐朽のプロセスにおいてどのように経時変化するのかを明らかにする。これによって木質バイオマスの有効活用に向けた基盤を得る。

片平正人: 2011(平成23)年度 生存圏ミッション研究 図 2図 2 木質バイオマスの丸ごと、高分解能 1H-13C HSQC スペクトル

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2011年8月3日作成

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