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2010(平成22) 年度 生存圏科学 ミッション研究 2

更新日: 2017/09/20

研究課題

白色腐朽菌リグニン分解機構マスターレギュレーターの検索

研究組織

 代表者 入江俊一 (滋賀県立大学環境科学部)
 共同研究者 本田与一 (京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)
  • ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)
  • ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

研究概要

木質資源を利用しやすい形態の資源へ変換するためには、木質リグニンを低分子化する必要がある。除去方法としては、従来の物理・化学的方法よりも低コストで環境負荷が少ない生物的発酵法が望ましい。白色腐朽菌と呼ばれる一群の担子菌は木質リグニンを完全に無機化する。しかし、分解開始の条件や分解経路の詳細については未解明の点が多く、そのことが産業的なバイオリアクターの開発を妨げている。この問題を解決するためには、従来のようにリグニン分解に関与する個々の酵素遺伝子を取り出して個別に解析するのではなく、菌としてどの様な機構で応答してどの様な遺伝子群を発現するのか、つまり木質リグニン分解に関する白色腐朽菌の環境応答の全貌を明らかとする必要がある。その情報を得ることが出来れば、リグニン分解機構全体を制御するマスターレギュレーターを特定し、それをターゲットした分子育種や白色腐朽菌利用条件の改良も可能となる。

白色腐朽菌 Phanerochaete chrysosporium は主要なリグニン分解酵素遺伝子として、10 種のリグニンペルオキシダーゼ(lip)アイソザイム遺伝子と5種のマンガンペルオキシダーゼ(mnp)アイソザイム遺伝子を持つ。昨年度、我々は、これらのアイソザイム遺伝子のほとんどがカルモデュリン(CaM)により制御されていることを明らかとした。このことにより、CaM と相互作用するタンパクの中に、リグニン分解酵素生産経路独自のマスターレギュレーターとして利用できる因子の存在が強く示唆された。本研究は、CaM と相互作用をし、リグニン分解系の発現を制御するタンパク質を検索することを目標の一つとした。

もう一つのモデル白色腐朽菌であるヒラタケについても、昨年度、我々は各種金属イオンに対する MnP 発現の応答を詳細に調べ、それに関与する全遺伝子を検出するトランスクリプトーム解析を行った。現在、P. chrysosporium における結果と比較統合し、結果を解析中である。ヒラタケは日本自生の菌であり(P. chrysosporium は輸入検疫有害菌に指定されている。)、共同研究者の本田らにより実用的な形質転換系が開発されている優れた育種素材である。本研究では、上記二種の菌における解析結果を比較検討し、リグニン分解系の発現制御の基本パスウェイを明らかとしたい。そして、最終的には、主にヒラタケを宿主とした組換えによる新規なリグニン分解菌の分子育種を目指す。

入江俊一: 2010(平成22)年度 生存圏ミッション研究

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2010年8月10日作成

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