研究課題
木屎漆(こくそうるし)の植物素材 ~脱活乾漆技法のさらなる理解に向けて
研究組織
代表者 | 杉山淳司 (京都大学・生存圏研究所) |
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共同研究者 | 八木直人 ((財)高輝度光科学研究センター・主席研究員) 藤本靑一 ((財)美術院国宝修理所・所長) |
関連ミッション |
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研究概要
興福寺阿修羅像や唐招提寺鑑真和上像は、天平時代を代表する脱活乾漆像(例えば図 1)で、現存するこれらの仏像のほとんどが国宝あるいは重要文化財に指定されている。脱活乾漆技法は中国よりもたらされたが、天平時代の乾漆像は木屎漆(麦漆に木粉を混ぜた塑形材)が肉厚に使われているため、中国の硬質の表現に対して、豊かで均整のとれた面持ちや体躯など我が国独特のやわらかな表現を生むといわれている。
現在の仏像制作や修理に用いられる木屎漆には、主として桧材の挽き粉を練り合わせられている。ところが、天平時代の脱乾漆像の豊かな曲線や厚みのある表現を実現するには粘りが不足しており、楡の樹皮やタブ粉を混ぜるなどさまざまな試みがなされており、現在も学術的な調査がすすめられている。
本研究では、天平時代を代表する脱活乾漆像微細断片を、高輝度放射光を用いた 3 次元描画(例えば図 2)、形態計測、組成分析、結晶構造解析などの先端技法を用いた解析に供し、天平の木屎漆に用いられた植物素材の特定を目的とする。
図 1 脱乾漆像の代表、国宝阿修羅(興福寺)
図 2 国宝世親菩薩立像(興福寺)の微細片の放射光 µCT 像。解剖学的特徴からカツラ、Cercidiphyllum japonicum と同定された。
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2009年10月2日作成