研究課題
国内産カラスビシャク系統から調製した生薬半夏と中国産市販半夏中の低分子成分の比較解析
研究組織
代表者 | 松岡健(九州大学大学院農学研究院) |
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共同研究者 | 矢崎一史(京都大学生存圏研究所) 中西浩平(京都大学生存圏研究所) 佐藤春菜(九州大学生物資源環境科学府) 江口壽彦(九州大学実験生物環境制御センター) |
関連ミッション |
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研究概要
野草カラスビシャクの塊茎は半夏と呼ばれる生薬(漢方薬原料)となる。半夏は漢方処方のほぼ1/4に含まれ、消費量上位10位以内に位置する極めて重要な生薬である。半夏の供給はほぼ100 %中国から輸入に頼っており、そのため国内生産に向けた耕作放棄地での栽培系の開発が複数の地方公共団体において進められている。一方九州大学においては、国内産カラスビシャクの栽培品種化を目指した研究を進めており、国内産系統の生育温度特性・光合成特性・栄養要求性等について報告している。また国内37地点由来系統の栽培形質の把握を進め、この過程で選抜した優良系統の品種登録が進行中である。
一方、情報不足のため、日本薬局方に定める半夏の品質基準中に化合物の記載は無い。そこで九州大学においては、半夏の多糖性吐気防止成分の定量系を開発し、輸入半夏と国産カラスビシャクから調製した半夏との比較を進めている。また森林圏遺伝子統御分野と共同研究を実施し(令和1、2年度萌芽研究、3年度ミッション研究)、その過程において20世紀半ばに半夏のえぐみ成分として報告されたホモゲンチジン酸(HGA)とジヒドロキシベンズアルデヒド(DHBA)の定量系を確立した。しかし最初の解析対象とした中国産半夏1品目中にこれら成分を検出することができなかった。
そこで本研究においては、国内系統の塊茎から異なる方法で調製した半夏や凍結乾燥塊茎(図参照)におけるこれら成分の存在を検討し、塊茎の加工法がこれら成分の存在に影響するか検討する。またこれまでに確立したクロマトグラフィー分離系において見出される複数のピークを対象にした低分子化合物のフィンガープリント解析と、同一の半夏試料中の有効多糖の含量の検討を実施することで、国産カラスビシャク由来の半夏と輸入半夏の比較を進める。
本研究の成果は、国産カラスビシャク由来の半夏が中国産と複数の成分の含量に関して同等であるかの情報となり、高品位生存圏の構築のためのカラスビシャク栽培に、国内在来系統を成分検討無しに用いても良いか、それとも選抜系統を用いるべきかの判断材料を提供することとなる。
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2022年11月18日作成