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2022(令和4) 年度 生存圏科学 共同研究 11

更新日: 2022/10/11

研究課題

セシウム蓄積に関わるダイズのイオノーム解析

研究組織

 代表者 二瓶直登(福島大学食農学類)
 共同研究者 杉山暁史(京都大学生存圏研究所)
上田義勝(京都大学生存圏研究所生存圏未来開拓研究センター)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御

研究概要

2011年の東京電力福島第一原発事故により放射性セシウム(RCs)が生存圏に放出し、甚大な被害をもたらした。農地に降下したRCsは外部被ばくだけでなく、作物を通じて内部被ばくの恐れがあるため、作物のRCs吸収、特に可食部への蓄積メカニズムは明確にする必要である。ダイズの子実は無胚乳種子のため、特にミネラルを蓄積しやすく、Cs濃度も他作物と比較して高い。ダイズは近年貴重なタンパク質源としても着目されており、世界的に広く栽培されている。申請者はこれまでに、ダイズのCs吸収メカニズムを明らかにする目的で共同研究者(杉山、上田)と共に、カリウム輸送体(High affinity K trasporter HAK)の関与を明らかにし、カリウム施肥の有用性を解明した。しかし、ダイズではK濃度が高い土壌でもRCsを吸収する場合があり、K輸送体以外の分子メカニズムの関与が想定される。昨年度は外国、日本で栽培される主要な品種および在来種も含めた約320品種・系統を栽培(図1)・測定し、ゲノムワイド関連解析(GWAS)によりCs輸送に関するいくつかの候補遺伝子を抽出した。本年度も昨年度と同じ品種・系統を再度栽培し、葉、子実を調査対象としてCs濃度のGWAS解析の再現性を確認するとともに、Cs以外の元素についても網羅的な解析を行う(図2)。ダイズはカリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)の他、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、銅(Cu)などの無機元素を多く含む。Csを含めたイオノーム解析により元素間の関係性を明らかにするとともに(図3)、Cs輸送に関わる関連遺伝子を推測し、さらに移行係数の高い圃場の要因特定や効果的なセシウム吸収抑制対策も提案できる。また、子実の元素濃度は栄養分の他、豆腐などを作成する際の加工性にも影響を与えるものであり、カドミウムのように人の健康に害を与えるものもある。本申請により、元素吸収や子実の元素制御メカニズムを遺伝子レベルで解明が進めば、品質のよい安全なダイズ生産への貢献も期待される

本申請は福島だけの課題ではなく、ダイズを食する生存圏全体の問題として世界の食料問題や物質循環へも波及する。更に、福島大学(ダイズ栽培、元素測定)、京都大学(根圏環境解析、遺伝子発現解析)各々の長所を活かすことで大学間連携による相乗効果を発揮することが大いに期待されるものである。

二瓶直登: 2022(令和4)年度生存圏科学共同研究 図1図1 GWAS解析集団の播種(上)と生育(下)の様子

二瓶直登: 2022(令和4)年度生存圏科学共同研究 図2図2 サンプリングとイオノームおよびGWAS解析

二瓶直登: 2022(令和4)年度生存圏科学共同研究 図3図3 イオン成分のネットワーク

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2022年10月11日作成

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