研究課題
紫外線計測データに基づく母体と赤ちゃんのビタミンD生成量の推定と血中ビタミンD濃度との関係に関する研究
研究組織
代表者 | 中島英彰(国立環境研究所地球システム領域) |
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共同研究者 | 高橋けんし(京都大学生存圏研究所) 佐々木徹(国立環境研究所地球システム領域) 坂本優子(順天堂大学医学部附属練馬病院) 本田由佳(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科) |
関連ミッション |
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研究概要
オゾンホール発見以降、多くの女性は紫外線の有害性とともに美容的な観点からも太陽光を嫌い、日光照射を避けるようになった。そのことにより、太陽光紫外線による体内での必要不可欠なビタミンDの生成阻害が生じ、近年の日本人若年女性では慢性的にビタミンD不足になっていると報告されている。ビタミンD生成の観点からは、皮膚や目などに有害な影響を与えない範囲で適度なUV-B照射を受けるのが望ましいが、その量を見積もるのは簡単なことではない。地上に達するUV-B強度は、場所・季節・時間などで決まる太陽天頂角や、天候、上空のオゾン量、エアロゾル量といった多くの要素によって変化するからである。申請者らはこれまで、皮膚に悪影響が及ばない範囲で1日の健康な生活に必要な10 μgのビタミンDを生成する紫外線照射時間を計算する「ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報」というシステムを構築してきており、日本各地11ヶ所(落石岬、陸別、札幌、青森、つくば、横浜、名古屋、大津、大阪、宮崎、波照間)における紫外線計測データをもとに、準リアルタイムの日光照射時間データの提供を行ってきている(http://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/)。
今年の計画では、順天堂大学練馬病院を受診した妊婦さんと出産後6ヶ月の赤ちゃんを対象にアンケートと血液検査を行い、直近の日光照射時間とビタミンD含有食品の摂取量と、体内のビタミンD濃度との相関解析を行う。アンケート結果をもとに、直前2週間の外出履歴と日光照射時間と、実際にその日の直近の観測点における紫外線強度データから、対象者の体内で産出されたと想定されるビタミンD量を計算する。これと、血液検査から求められた実際の体内ビタミンD量の相関を解析する。このことにより、計算によるビタミンD生成量と実際の体内ビタミンD量の間に、どのような相関があるのかを解析する。さらに、食事によるビタミンD摂取量もアンケート調査によって推定し、食事と日光のどちらからより効率的にビタミンDを摂取できているかを推定する。その結果、母体と赤ちゃん双方に骨折やくる病など、ビタミンD不足が由来の疾患にかからないレベルのビタミンD量を維持するために必要な日光浴時間の目安を示すことが可能となると考えられる。本研究によって、実際の太陽照射と体内ビタミンD量の有意な相関関係が得られれば、世界的に見ても初となる画期的な知見となる。
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2022年10月4日作成