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2022(令和4) 年度 生存圏科学 共同研究 6

更新日: 2022/10/05

研究課題

合理的代謝フロースイッチングによる芳香族生理活性物質の生産

研究組織

 代表者 肥塚崇男(山口大学大学院創成科学研究科)
 共同研究者 市野琢爾(京都大学生存圏研究所)
矢崎一史(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

稀少植物を含めた天然資源に由来する生理活性物質、特に揮発性の芳香族香気物質は、長引くコロナ禍での生活習慣病予防など人の健康維持に欠かせない機能性成分として注目されている。本研究では、人の健康と稀少な植物資源の保護、環境保全への貢献を目指し、進化の過程で獲得した植物が有する潜在的代謝力を分子レベルで理解し、最大限に利活用することを目的とし、持続的且つ効率的な生理活性物質の生産プラットフォームを構築する。近年、海外では、稀少植物に由来する天然香料の代替品として、バイオテクノロジー技術によって生産されるバイオ香料が注目されつつある。一方、その生産性は外部からの多量の炭素源供給に依存しており、エネルギー源の投資が多いことが問題となっている。しかし、植物細胞内の代謝フラックスを合理的に改変、また、ストレス誘導的に高まる植物に秘められた代謝力を最大限に引き出すことができれば、植物バイオマスに由来する効率的な生産システムの構築が可能となる。そこで、申請者らは世界に先駆けて発見した生合成遺伝子の活用を特色として、代謝経路の分岐点に着目した合理的代謝工学により、植物バイオマスとして豊富に存在する色素成分を生理活性物質の生成へと利活用することを本研究の目的とした。具体的には、下記の2点について研究を進める。

①色素成分から生理活性香気物質への代謝フロースイッチング —異なる発現ホストによる生成量の比較—

現在までに、色素成分や香気成分を含めた多様な芳香族化合物が生合成中間体であるp-クマロイルCoAを経由する同じ経路を共有していることが知られている。しかし、これら芳香族化合物の代謝フラックスの変化が各化合物の生成量にどのように影響するのかは未解明であった。現在までに、ナス科のモデル植物であるタバコを発現ホストとして、芳香族香気物質であるラズベリーケトンの生合成遺伝子(BAS, RZS)を35Sプロモーター下で過剰発現させた形質転換体を作出し、色素成分であるアントシアニンから香気成分のラズベリーケトンへと代謝フローをスイッチングすることに成功している(下図)。さらに、転写因子(PAP1)を利用した細胞内基質の強化により、香気成分の生成量が高まるという知見を得ている。この結果を踏まえて本研究では、同様の代謝工学デザインを色素成分の生産性が活発なムラサキやペチュニア、トマトなどに応用し、異なる発現ホストの違いが代謝フローの改変に与える影響を比較、解析する。

肥塚崇男: 2022(令和4)年度生存圏科学共同研究 図

②ストレス処理による植物内在性基質の増強と香気成分生成量への影響

一般的に、色素成分を含めた植物特化代謝産物(二次代謝産物)は環境ストレスに対する防御応答として誘導的に生成することが知られている。現在までに、申請者らはラズベリーケトン生合成遺伝子過剰発現タバコから毛状根培養細胞を作出し、無限増殖する細胞培養系を確立している。本研究では、得られた毛状根培養細胞に光・酸化ストレス処理、植物ホルモン処理やエリシター処理を行い、細胞内基質濃度が誘導的に高まる条件を確立する。また、培地中に目的化合物が排出された場合には、トランスポーター阻害剤を使った実験系により、どのような排出機構がはたらいているのかを調査する。

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2022年10月4日作成,2022年10月5日更新

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