研究課題
小角散乱を用いた飽水竹材の熱軟化温度付近におけるナノ構造の観察
研究組織
代表者 | 岡久陽子(京都工芸繊維大学繊維学系) |
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共同研究者 | 今井友也(京都大学生存圏研究所) 神代圭輔(京都府立大学生命環境科学研究科) |
関連ミッション |
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研究概要
本研究では、細胞壁構成成分の熱によるサブミクロンスケールの変化および構成成分同士の相互作用が竹材全体の物性に与える影響についての全体像を得ることを目的に、飽水状態における熱軟化挙動の解析と熱軟化温度付近における小角X線散乱測定および解析を行う。竹材において、水や熱を加えることで発現する可塑性は「矯め直し」と呼ばれる技法として伝統的に用いられてきた。一方で、技術の向上には未だ職人の経験に頼ることが多く、高度加工技術の開発を目的とした可塑性の発現機構の解明が強く求められている。飽水状態の竹材では木材と同様に60–80 ℃付近で動的弾性率(E′)が急激に低下し、損失正接(tanδ)がピークを示す。これまでの研究により、リグニンやヘミセルロースは水分によって分子鎖間が可塑化され熱軟化温度が低下し、ヘミセルロースは−50 ℃付近で、リグニンは80 ℃付近で軟化することが報告されており、竹材の可塑性の発現機構には木材と同様に、リグニンやヘミセルロースといった細胞壁マトリクス成分の影響が大きいと考えられる。一方で、竹材細胞壁は複雑な階層構造を有する上、維管束と柔細胞の割合が内皮側と外皮側では異なり、それぞれの成分を単離し構造変化を追うのみでは材全体で生じている物理的機構の解明には至らない。本研究では、飽水竹材の小角X線散乱法を用いた温度変化測定を行い、同一材から取得した動的粘弾性試験結果と照らし合わせることにより、熱軟化温度付近における細胞壁構造の可視化につなげる。
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2020年8月3日作成